EPA外国人看護師と働く日本の現状と課題・メリットについて紹介

EPA外国人看護師働く看護師現状課題メリット

平成20年度からわが国では外国人看護師の受け入れが始まりました。インドネシア、フィリピン、ベトナムの3国とそれぞれの協定に基づき始まった看護師の受け入れは約1100人(平成28年現在・看護師候補者含む)を超えております。

これらの受け入れの目的は、経済活動の連携強化であり、労働力不足への対応ではないとされています。でも現場としては一緒に働くのだから人員増加を期待するのは当然です。

この記事では外国人看護師を受け入れる側であり、彼らと共に働く看護師から見たその現状をお話ししたいと思います。

1.外国人看護師が日本で看護師として働くには

外国人看護師が日本で看護師として働くには

まずは外国人看護師が日本で看護師として働くために必要なことを説明いたします。外国人看護師は母国で看護師免許を取得し、2~3年以上の実務経験を有する者がその候補となります。

 

来日半年で日本語の習得が必要

来日後は約半年間の日本語研修を受け、ビジネスレベルでの会話が可能な程度の日本語を習得しなければなりません。そして病院や施設などで看護助手として働きながら勉強を重ね、日本の看護師国家試験への合格を目指します。

 

4年以内に看護師国家試験に合格しなければならない

4年以内に看護師国家試験に合格しなければ日本で看護師として働く夢は閉ざされます。そういった厳しい条件をクリアした者だけが日本国内で看護師として働くことができるのです。平成27年現在、外国人看護師の看護師国家試験の累計合格者は154人となりました。

 

外国人看護師の看護師国家試験合格率は低い

外国人看護師が日本の看護師免許を取得するためには看護師国家試験に合格しなければなりません。しかしその合格率はいまだ低いままです。

  • 看護師国家試験合格率 90%(平成27年度)
  • 外国人看護師の国家試験合格率 平均7%(平成27年)

この結果からみても外国人看護師が国家試験に合格することは、かなり狭き門であることがわかります。受け入れ制度導入から数年はその合格率は2%台でした。これは日本国内で難関資格試験といわれる司法書士(合格率3%)以下の合格率です。

 

外国人看護師の看護師国家試験の合格率を上げる改善策

外国人看護師の受け入れ開始後より続く看護師国家試験の合格率の低さは問題視されました。これらの問題を解消すべく以下の改善策が取られることとなりました。(平成24年度より)

  • 試験問題の漢字にすべてふり仮名をつける
  • 日本語の専門用語には英語で併記をする
  • 試験時間を延長する

その結果、合格率はやや上昇しましたが依然として日本人との差は歴然です。これは外国人にとって日本語がいかに難しいかということです。そして日本語の難しさと同様に、医療用語の難解さも大きな壁となっています。

 

ビジネスレベルの日本語習得などの課題は大きい

外国人看護師が資格取得後に働くのは日本の医療現場です。試験の難易度を下げてしまっては医療・看護の質が下がります。このあたりのすり合わせや、ビジネスレベルでは追いつけない医療の現場で使える日本語の取得など、まだまだ今後の課題は多いようです。

 

2.外国人看護師が定着しない理由について

外国人看護師定着しない理由

外国人看護師の受け入れは、お互いの経済活動連携強化のために始まった制度です。しかし国家試験に合格しても帰国してしまう外国人が3割程度いるのが現状です。

 

教育体制が不十分な病院が多い

言語レベルでフォローをしなければいけない外国人看護師を一人受け入れるためには、指導に当たるスタッフが長期で必要となります。余裕がない中で共に働き、資格取得を目指す彼らをみんなで応援しなければならないのです。受け入れる側の教育体制がしっかりしていないとどちらも辛い思いをすることになります。

 

ポイント!

ポイント

受け入れる側の病院や施設など、どこも人員が足りているわけではありません。新卒の看護師を受け入れるのとはわけが違います

 

教育体制がないと国家試験に合格はできない

国家試験合格を目指すには「午前は病棟の仕事、午後は試験勉強」などの待遇が必要となります。その体制が不十分であると結局、国家試験に合格できず帰国することになってしまいます。

 

3.外国人看護師と一緒に働く看護師の現状

外国人看護師一緒に働く看護師現状

それでは実際に外国人看護師と一緒に働く看護師はどのように感じているのでしょうか。超難関である試験に合格し、晴れて日本で看護師として働く外国人看護師にスポットを当てた記事やニュースはたくさんあります。しかし一緒に働く看護師の苦労はあまり取り上げられていません。

あなたの職場で今後、外国人看護師の受け入れが始まるかもしれません。転職先には外国人看護師がいるかもしれません。日本国内で働くすべての看護師に知っておいてほしい現状を紹介いたします。

 

外国人看護師を受け入れても看護師は増加していない

もともと国の方針は人員不足の解消のための受け入れではないので、それを期待するのは間違いではあります。しかし受け入れる側としては少しでも人員の増加となることに期待をするのは当たり前です。国家試験に合格したら晴れて同じ看護師として仕事をする仲間なのです。

 

看護師の人材不足は平行線のまま

今現在、外国人看護師受け入れ前と後で看護師の人材不足にはまったく変わりはありません。資格取得後も継続して細かいフォローが必要となるため外国人看護師を受け入れる現場はむしろマイナスの状態となります。

 

患者の理解の理解を得る必要もある

私の病院では院内にEPA外国人看護師が勤務していることを掲示しています。各フロアには写真入りで一人一人、出身国やニックネームなどが書かれ掲示されています。まだまだ珍しさのあまりかその掲示を見ている患者やその家族は多くいます。まずは「知ってもらう」ことが重要です。

 

外国人看護師に抵抗を感じる患者もいる

少数ではありますが、中にはやはり看護師が外国人であることへの抵抗感を訴える方もいます。そういった方には受け持ちを外すなど、個別的な対処を行っています。

 

外国人看護師は患者と親しくなれる

しかし大抵の患者はすぐに慣れ、外国人看護師の明るい笑顔に癒され、すぐにニックネームで呼んでくれています。私たちは「看護師さん」と一括りにされることが多いのですが、外国人看護師に対してはなぜかすぐにその愛称を覚え、ニックネームで呼ぶことは少し羨ましく感じます。

 

外国人看護師が働くには周囲のフォローが鍵となる

外国人看護師が働くには様々な場面で周りのフォローが鍵となります。日本語が難しいとはいえ、痛みや苦痛があるときに何度も同じことを聞かれたりすることで苛立つ患者がいることも事実です。また医師への報告時にも症状を的確に伝えられるようサポートが必要です。

 

ポイント!

ポイント

習慣や文化の違い、言葉の問題などから周囲とトラブルにならないように勤務の際にはフォロー役の看護師が必ず付きます

 

4.外国人看護師と働くことの難しさは言葉の壁

外国人看護師働く言葉の壁

外国人看護師はビジネスレベルでの日本語研修を受けているので、簡単な日常会話であればそれほど困難ではありません。しかし日々の業務で彼らは常に電子辞書を駆使し、カルテや記録類と苦戦する日々です。もちろん医師が書いた記録もなかなか読み取ることが困難なため、周囲の手助けが必要です。

代表的な言葉の問題を紹介します。

  • 患者の苗字・名前が読めない
  • カルテが読めない
  • 漢字が書けない
  • 敬語が使えない
  • 外線電話に出られない

そして、もう一つ大きな問題は患者の訴えがうまく聞き取れない、読み取れないことです。こちらも日本語の難しさがその原因なのですが、非言語で読み取らなければならないことなども含め、日本人同士なら通じるものが外国人看護師には通じにくいという問題が発生します。

 

地方の訛りなどは外国人看護師には理解が難しい

彼らはビジネスレベルで通用する日本語を習得しているので、看護師同士としての日常会話なら何とかなります。しかし患者との会話はそう簡単ではありません。土地柄の訛りや言い回しなど、そこに住む者ならわかることも外国人看護師は聞いたことがない言葉として捉えられます。

 

患者側との問題もある

もちろん患者はきちんと話ができる方ばかりではありません。認知症などで会話が不自由な場合や、うまく言葉で話せない人からは表情やしぐさから読み取らなければいけない時もあります。

 

外国人看護師が習得できないスキルは補う必要がある

日本語の習得だけでは、日本人ならではの曖昧なニュアンスや言葉の陰に隠れた本音を読み取る術は身に付きません。看護師としてのこの技術は日本人であっても難しいこともあります。そうなると周りのスタッフが介入したり、言葉の説明をしたり、代わりに患者を見に行ったりと、自分の業務を中断せざるを得なくなります。

 

外国人看護師では早口の日本語は聞き取ることが困難

様々な人がかけてくる外線電話に出ることも外国人看護師にとっては困難です。早口で話されると聞き取れないことが多くなるため、結局ほかのスタッフが替わって同じことを電話の相手に話してもらわなければいけないという二度手間になるのです。急いでいる方にとってはイライラさせてしまう原因になります。

 

電話はでなくても良いシステムがある

うまく聞き取れなかったことを気にして外国人看護師が落ち込んでしまうこともあるため、たとえ目の前で電話が鳴っていても外線電話には出なくてよいというシステムになっています。

 

5.外国人看護師とともに働くメリットは大きい

外国人看護師働くメリット大きい

私の職場には今、2人の外国人看護師がいます。彼らはもともと母国語と英語を共通言語として身に着けているため、私は苦手な英語を教えてもらったりしています。日本語と英語が飛び交う会話も楽しいものです。

 

グローバルな雰囲気な職場で働くことができる

母国の観光地やおいしい料理などを教えてもらったり、文化の違いを話したりと休憩室はいつもグローバルな雰囲気です。異国の看護事情など、普段は知ることができないことも聞くことができます

 

外国人看護師への指導は看護の基本を思い出す機会を与えてくれる

これは新人看護師に指導するときと同様で、看護の基礎を思い出す貴重な機会を与えてくれます。外国人看護師にもわかりやすい表現で説明しなければいけないことから、自分の中で手技の再確認になったりします

 

スタッフのコミュニケーションも円滑になる

ときどき日本にしかないものを説明するときに「これはどう説明したら理解してくれるか?」とほかの看護師と相談しながらフォローし合うなど、職場全体がうまくコミュニケーションを取りつつ日々の業務にあたっています。

 

まとめ

わが国で始まった外国人看護師の受け入れ開始から8年たった今、その課題はまだまだ山積みです。今後どのようになっていくのかはわかりませんが、同じ看護師として働く以上は現場で戦力となってほしいというのがその願いです。大きな言葉の壁を乗り越えるのは容易なことではありませんが、外国人看護師と働くことで得られるものも多いのです。

まだそういった職場で働いたことがない人も今後は外国人看護師と働く機会があるかもしれません。またすでに外国人看護師と一緒に仕事をしている看護師もいることでしょう。今はまだ3国に限られていますが、今後どのように発展していくのかはわかりません。どのような環境でも、どのような職場でも誰もが気持ちよく働けるといいですね。

今後、少しでも多くの人が日本で働きたいと思ってもらえるような職場を増やすことが単純に国内の看護師不足を解消する鍵になるかもしれません。きっとスタッフが生き生きと働く職場では患者も安心して療養できることでしょう。

 

林みずほ

【群馬県/40代・資格:看護師】

看護学校卒業後、某有名企業が運営する病院へ就職。その後地元へUターン。結婚・妊娠・出産・離婚という怒涛のような20代をおくり、転職ラッシュな30代を走り抜け、ようやく安定の40代を迎えることができました。趣味はライブと旅行とダイビング。酒とロックと煙草をこよなく愛す不良看護師です。総合病院で勤務する傍ら、現在は執筆活動に邁進中。看護師歴20年の知識と経験・私の失敗を活かしつつ、若い世代にいろいろ伝えていきたいと思っております。

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