著作者

佐藤ゆうき

正看護師

佐藤ゆうき

( 看護師 )

摂食・嚥下障害看護認定看護師の役割や仕事内容を体験談レポート

公開:、更新:2018年05月07日
摂食・嚥下障害看護認定看護師の役割

食べるという事は人間が生きていく上で欠かせない行為ですが、病気や入院をすることで食事摂取が困難になる場合もあり、食べたくても食べることができず辛い思いをしている患者も多くいます。

摂食・嚥下障害看護認定看護師はそんな患者の食事をサポートする、いわば食事摂取のエキスパートです。

今回は摂食・嚥下障害看護認定看護師の役割と仕事内容を紹介したいと思います。患者の食事方法や食事介助について興味のある方は参考にしてみてください。

1.摂食・嚥下障害看護認定看護師の役割

私たちにとって「食事をする」ということは当たり前の行為であり、普段何気なく行っていることです。

しかし、食事をすること自体にリスクがある患者さんの場合、食事摂取が命の危険もあるため、気を付けて食事をしなければなりません。

そのため、摂食・嚥下障害看護認定看護師の関わりがとても重要となります。

具体的にどのような仕事をしているのか、詳しくみていきます。

 

(1)患者さんをしっかりアセスメントする

患者さんをしっかりアセスメントする

摂食・嚥下障害看護認定看護師の大きな役割の1つが患者の状態をアセスメントし、患者に合ったサポートを行っていくことです。

アセスメントする患者は食事摂取困難な方だけではなく、食事が摂取できている患者も対象となります。

それぞれについて詳しく紹介します。

 

食事摂取困難な患者に対して

食事が摂取できなくなる理由は患者さんによって異なります。

病気や手術後などの身体的理由の場合や、環境の変化や心理面でショックを受けた場合などの精神的理由など様々です。

摂食・嚥下障害看護認定看護師は他の医療スタッフと共に食事摂取困難な患者の中から、嚥下機能や全身の筋力の状態、日常生活自立度、精神状態など様々な面からアセスメントを行い摂食が可能であるかを判断します。食事開始となった場合、直接的なサポートが始まります。

食事をすることでむせ込み、誤嚥性肺炎を起こしてしまうリスクもあるため事前のアセスメントはとても重要となります。NSTの中で何度も話し合いを行ったり、病棟の看護師や家族に患者の状態を確認したりと入念なチェックを行い摂食可能が判断する必要があります。

 

食事摂取可能な患者に対して

摂食・嚥下障害看護認定看護師は食事摂取困難な患者だけではなく、食事ができる患者もアセスメントの対象となります。

特に高齢の患者やむせ込みがある患者、誤嚥性肺炎の既往がある患者などは入院中継続的にアセスメントを行います。

NSTが介入している患者は嚥下機能評価を定期的に行い、患者に合った食事摂取方法を提供し誤嚥のリスクを最小限にできるようサポートしていきます。

 

【体験談】NSTの介入方法

私が働いていた病院でのNSTの介入方法を紹介します。

【禁食中の患者が食事再開までの流れ】

  1. 禁食中で食事開始ができるかどうかの判断が難しい患者がいた場合、担当医が患者の状態をみてもらうためNSTに依頼をする
  2. NSTが介入し、食事が摂取可能であるかアセスメントし担当医へ返信する
  3. 食事摂取可能であると判断された場合、担当医が食事再開の指示を出す
  4. NSTが介入し食事をサポートする
  5. 食上げなどの食事形態の変更などは担当医の許可を得てから行う

ここで重要なのが、NSTは食事のサポートを密に行い、担当医へアドバイスを行いますが、食事再開の指示や食事形態の変更などは必ず医師の指示で行わなければならないということでした。

最終判断は担当医が行う必要があるのでNSTとの情報交換や定期的なカンファレンスがとても大切でした。

 

(2)口腔ケアの実施

口腔ケアの実施

誤嚥性肺炎を予防するためには、むせ込みがないよう食事をする時に注意をするだけでなく日頃の口腔ケアも重要です。

口腔内が不潔のままだとむせ込みを起こした時に誤嚥性肺炎になるリスクが高まってしまいます。さらに舌苔などがある場合、味覚がきちんと機能しなくなり食べ物のおいしさを感じにくくなってしまいます。

また、食事をすることで唾液の分泌が活発となり、口腔内の清潔が保たれやすいというメリットがあります。

そのため、食事摂取困難な患者や長期間食事摂取していない患者は唾液が少なくなり口腔内がさらに不潔になります。

摂食・嚥下障害看護認定看護師は食事を開始する前に患者の口腔内を清潔にする事から始めます。

毎日歯磨きやうがいを行うように声をかけたり、患者ごとに効果的な歯磨きの仕方を指導したりします。患者が自力で歯磨きができない場合は家族や病棟看護師に指導し、一貫したケアが行えるよう調整します。

歯磨きが直接誤嚥性肺炎を予防する行為としてつながらない患者も多くいるため、きちんと理解してもらえるよう教育・指導を行っていくことが重要です。

 

(3)食べることの楽しさを伝える

食べることの楽しさを伝える

食事摂取が困難な場合の栄養補給・水分補給の代用として点滴や経管栄養などがあります。食事をしなくても生命を維持していくことは可能ですが、食事をすることで人と人が話しをするコミュニケーションの場になったり、おいしい・まずいなど味覚を味わったりすることで喜びや楽しさを感じられるようになります。

患者にこのような感覚を取り戻してもらい、QOLの向上を図るためにも摂食・嚥下障害看護認定看護師は食事をすることの大切さを伝えていく必要があります。

具体的には患者が以前好きだった食べ物について尋ね話をしたり、食べ物が載っている本を読んでもらったりなど、食事に対して少しでも関心を持ってもらうように働きがけます。

 

(4)食事形態の工夫

食事形態の工夫

食事を再開した時、どのような食事形態(重湯や五分粥など)から開始するか、いつ、どのような食事に食上げをするのかがポイントとなります。

患者の摂取状況や飲み込みの状態を確認しNST・担当医・病棟看護師で話合い決めることが多いです。ずっと重湯ばかりが続くと患者のモチベーションも低下しやすくなりますし、だからと言ってすぐに食上げをすると誤嚥性肺炎や消化器症状悪化のリスクも高まるため患者の状態をよく観察し的確な判断が必要となります。

また、食事をする時は今何を食べているのか、献立は何なのかなど味覚だけでなく視覚や聴覚、嗅覚なども活用し、患者の食事に対する意欲を高めることも重要です。

 

(5)誤嚥予防を行う

誤嚥予防を行う

実際に食事が開始されると1番気を付けなければならないのが誤嚥性肺炎です。高齢者が起こす肺炎の約半数以上が誤嚥性肺炎とされており、誰しもが罹る可能性があります。

そのため、少しでも誤嚥性肺炎のリスクがある患者に対しては予防を徹底しなければいけません。誤嚥性肺炎の予防は大きく分けて3つあります。

  1. 口腔ケアの実施:毎日歯磨きをする習慣を作るようサポートします。
  2. 嚥下訓練の実施:長期間摂取していなかった患者は嚥下機能が低下しているため、とろみのついた水などで飲み込みの練習をします。飲み込みができたと判断されてから食事が開始となります。
  3. 姿勢の工夫:椅子や車いすに座るなど座位を保持した状態で食事をするように指導します。筋力の低下があり、自力で座位保持ができない患者はベッドをリクライニングにしバスタオルやクッションなどで座位が保てるよう調整します。

 

(6)退院指導の実施

退院指導の実施

食事は退院後も継続して注意する必要があります。退院してからすぐに誤嚥性肺炎で入院してしまう患者も少なくないため、食事についての退院指導が大切となります。

「自分は誤嚥性肺炎にならないだろう」と思い込んでいる患者が多いため、誤嚥性肺炎は誰でもなってしまう可能性があり、ほんの少しのむせ込みが命にかかわる重要な事態を招きかねないことを知ってもらう必要があります。

食事の作り方についても、水や汁物などにはとろみをつけることや、むせにくいゼリーやパサパサしていない食べ物を選ぶなどの工夫が必要です。

退院したからと言って何でも好きなものを食べるのではなく、飲み込みやすい食べ物を積極的に選んで食べてもらえるよう患者・家族に指導します。

 

(7)病棟看護師への指導

病棟看護師への指導

摂食・嚥下障害看護認定看護師が介入していても、ずっと同じ患者のサポートができるわけではなく、病棟看護師が見守る機会が多くなります。

そのため、食事摂取方法や介助方法などを病棟看護師に指導し、統一したケアを提供できるようにしなければなりません。定期的に情報交換を行ったり、患者の状態・今後の流れなどをカルテに記載したりして病棟看護師と密に関わっていくことが大切です。

また、病棟看護師の疑問点や不明点などに答えたり、定期的に勉強会を開くなどをしたりして看護師の育成にも力をいれます。

 

2.院内で行う仕事内容や役割を看護師がレポート

院内で行う仕事内容や役割を看護師がレポート

病棟に属さずNSTのメンバーとして各病棟をラウンドしていた

私が働いていた病院にも摂食・嚥下障害看護認定看護師が在籍していたため、実際にどうのように活動していたのかを紹介します。

摂食・嚥下障害看護認定看護師は病棟に属さずNSTのメンバーとして各病棟をラウンドしていました。

摂食に問題がある患者に対しては実際の食事の様子を観察し、改善点を患者や家族に説明していました。病棟看護師も統一したケアが行えるよう担当看護師同席のもと指導を行ったり、カルテに指導内容を記載するなど情報伝達に力を入れていました。担当医と意見が合わず衝突することがあっても、患者に合った食事摂取方法を選ぶためにしっかり自分の意見を伝えている所を見てプロ意識を感じました。

また、摂食・嚥下障害看護認定看護師は医師や栄養士、薬剤師、理学療法士など様々な職種のスタッフと関わる機会が多いため、こまめに情報交換を行っていくことが大切であると思いました。

私が受け持った患者さんにNSTが介入したことがありました。摂食・嚥下障害看護認定看護師が働きかけることで、患者さんが徐々に食事を取れるようになり、みるみる笑顔になっていき、よく話をするようになった姿を見て摂食・嚥下障害看護認定看護師の重要性を感じました。

佐藤ゆうき 看護師佐藤ゆうき(正看護師/千葉県/31歳)

 

3.摂食・嚥下障害看護認定看護師になるには

摂食・嚥下障害看護認定看護師になるには

摂食・嚥下障害看護認定看護師は2006年に資格認定が開始され、現在の認定看護師の人数は733人です。

 

2013年 442人
2014年 522人
2015年 595人
2016年 671人
2017年 733人

(日本看護協会 認定部より2017年7月データ)

摂食・嚥下障害看護認定看護師は病院内のNST(栄養サポートチーム)に所属していることが多いです。

NSTは摂食・嚥下障害看護認定看護師・医師・栄養士・薬剤師・理学療法士などのスタッフから構成されていて、患者の摂食・嚥下機能の向上を目指すために、各病棟をラウンドし患者の食事摂取状況を観察したり、定期的にカンファレンスを開き情報交換を行ったりしています。

 

摂食・嚥下障害看護認定看護師の資格取得条件

  • 日本国の看護師免許を保有していること
  • 看護師としての実務経験が通算5年以上あること
  • 通算3年以上、摂食嚥下障害患者が多い保健医療福祉施設、または在宅ケア領域での看護実績を有すること
  • 摂食嚥下障害患者を5例以上担当した実績を有すること
  • 現在、摂食嚥下障害患者の看護に携わっていることが望ましい
  • 日本看護協会が認定している認定看護師教育課程を修了(6ヶ月・615時間以上)

上記の条件を見ても分かる通り、病院のサポートがなければ認定看護師資格は取得できません。

 

日本看護協会が認定している摂食・嚥下障害看護認定看護師の教育機関一覧

茨城県 茨城県立医療大学 地域貢献研究センター 認定看護師教育課程
(定員数:20名)
富山県 富山県看護協会 富山県認定看護師教育センター
(定員数:25名)
愛知県 愛知県看護協会 認定看護師教育課程
(定員数:30名)
広島県 日本赤十字広島看護大学 ヒューマン・ケアリングセンター
(定員数:30名)

(2018年1月31日現在)

 

注意しよう!認定看護師にかかる費用について

入試検定料 約5万円
入学金 約5万円
授業料 約70万円
実習費 約10万円
認定審査費用 約5万円
認定費用 約5万円
   合計約100万円

※ここに記載してある費用に加え、無給となる6ヶ月間の生活費用も考慮する必要があります。
認定看護師を目指す看護師の方は「認定看護師支援がある病院への看護師転職で知りたい6つのポイント」を確認してください。

 

4.まとめ

摂食・嚥下障害看護認定看護師は、患者の食事に関する全てのサポートを行います。

病院のNSTに所属することが多いため、特定の勤務場所を持たず、入院患者全員が対象となるため、病棟看護師とは仕事内容が大きく変わってしまう可能性があります。

仕事量も増えてしまうかもしれませんが、それだけ必要性は高いと思います。

患者さんの摂食・嚥下に興味のある方は摂食・嚥下障害看護認定看護師を目指してみてはいかがでしょうか。

 

効率的に認定看護師支援を受けて資格取得を目指す方へ

効率的に認定看護師支援を受けて資格取得を目指す方へ

認定看護師を目指す看護師の方は「認定看護師支援がある病院への看護師転職で知りたい6つのポイント」を確認してください。

 

自転車旅行が大好きで、しまなみ海道を縦断してきた30代の看護師です。

都内の総合病院で約6年、その後クリニックで約2年勤務しました。現在は1児の母として子育て奮闘中ですが機会があればまた働きたいなと思っています。

病院で働いている時は人間関係に悩みましたが、なんとか6年間頑張ることができました。

自分が今までに経験したことをどんどん発信して、少しでも皆様のお役に立てればと思います。

看護師としての経歴

保有資格 ・正看護師
出身/年齢 ・千葉県/31歳
職務経験 ・総合病院・クリニック
診療科経験 ・呼吸器外科、呼吸器内科・消火器外科、消化器内科
・循環器内科・心臓血管外科・婦人科・小児科・眼科


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