内分泌内科とは、体の中で働く「ホルモン」という物質の異常によって引き起こされる病気の診断と治療を行う科です。大きく3つの体の異常に分けられます。
- ホルモンの分泌が過剰で起こる疾患
- ホルモンの分泌が不足して起こる疾患
- ホルモンは正常だが、ホルモンを分泌する臓器に問題がある疾患
代表的な疾患名を挙げると、糖尿病・高血圧・高脂血症・甲状腺機能行進症・甲状腺機能低下症などです。
ここでは「内分泌内科」への看護師転職について、必要なスキルや転職のメリット・デメリット、そして求人を探す時の注意点などについて記載しています。
1.内分泌内科の特徴について
2.内分泌内科で働く看護師の仕事内容
3.内分泌内科で働く看護師の1日のスケジュール
4.内分泌内科で働く看護師の年収・給与
5.内分泌内科で働く看護師のメリット
6.内分泌内科で働く看護師のデメリット
7.内分泌内科で働いて楽しかったこと・辛かったこと
8.内分泌内科への看護師求人を探す際のポイント
1.内分泌内科の特徴について

内分泌内科の特徴は以下の通りです。
- 患者の年齢層が幅広い
- 内科的な診療・治療が多い
多くの疾患を内分泌内科で扱うため、患者の年齢層は幼児~高齢者まで様々です。基本的には内科的な診療・治療を行いますが、まれにオペが適用される疾患があるため、その際は担当科が外科になります。
内分泌内科の患者は年齢層・性別に偏りがない
内分泌疾患はホルモン異常により起こる疾患です。ですので、幼い子たちの成長に関わる成長ホルモンの分泌異常も内分泌科に分類されることになり、幼児患者も存在します。
ホルモンは性別によっても違うため、年齢層だけでなく性別も偏りがないともいえます。よって、男女均等に様々な年齢層と関わることができるのが内分泌内科の特徴と言えます。
ポイント!

小児の疾患に関しては、内分泌疾患の場合でも小児科病棟での対象患者と扱うこともあり、病院によって担当科が分かれる場合もあります。
2.内分泌内科で働く看護師の仕事内容

内分泌内科で働く看護師の主な仕事内容は以下の通りです。
- 医師の診療・処置補助
- 服薬管理
- 採血業務
- 日常生活援助
- 日常生活・退院後の生活改善指導
内分泌内科での看護業務は基本的に他の科と大きな違いはなく、ご紹介した5つの業務が中心になります。
薬の自己管理ができない患者の投薬管理業務
自己管理ができる患者は処方された内服薬を患者自身に指示通り内服してもらえばいいのですが、自己管理ができない患者の場合は看護師が薬の管理をすべて行いますので、投薬の間違いがないよう注意していきます。
ポイント!

内分泌内科では内服薬による治療や疾患コントロールが主なので、日常業務では内服管理は重要になります。
薬の判断基準となる採血業務
内分泌内科は、内服薬の種類や量の増減が細かく数値によっても変わりやすい科です。薬の決定はすべて採血による数値が判断基準の中心にあるので、採血という業務も多くなります。
患者の今後を左右する生活指導業務
内分泌内科の疾患は治療がひと段落しても一生付き合っていかなければならない事もあり、長期間にわたり内服と受診を継続していかなければなりません。その教育を行うのが内分泌内科看護師の仕事です。
退院後の生活の仕方によって病気が悪くも良くもなります。疾患に対しての正しい知識や健康的な生活を送るための具体的な方法も理解してもらう必要があり、その教育をしなければなりません。
ポイント!

疾患と長い付き合いになる患者やその家族との信頼関係は、欠かすことができません。教育する際は、相手の気持ちを思いやりながらも時には厳しく注意することも必要になります。
3.内分泌内科で働く看護師の1日のスケジュール
内分泌内科で働く看護師の1日のスケジュールを以下にご紹介します。ご紹介するのは病棟の内分泌内科で働く看護師のスケジュールです。
時間 | 看護師の仕事内容 | 詳細 |
8:30~ | 担当患者の情報収集 | 事前に患者情報を収集 |
8:30~ | 夜勤看護師からの申し送り 個々の状態報告 | ・カルテ未入力情報などの引継ぎ ・医師の指示などを口頭で情報を共有 |
8:45~ | 施行予定の処置や点滴づくり ショートカンファレンス | ・処置確認後、必要物品の準備 ・日勤リーダーに看護行動計画相談 |
9:00~ | 担当患者の部屋周り 点滴交換 | ・バイタルサイン測定、身体症状の変化を確認 ・点滴交換や留置針の刺入部のトラブルに対応 ・決まった時間に遅れないよう採血や血糖測定 |
10:00~ | 医師から新たな指示や検査 処置のオーダーの有無確認 | ・早急な報告が必要な患者は医師に報告 ・医師からのオーダー確認 ・検査時間等を把握 |
10:10~ | 清潔ケア、入浴介助 入院患者の受け入れ | ・入浴介助、入浴できない患者には清拭 ・新規入院患者の案内、カルテ入力など |
11:00~ | 記録入力 昼食時の配薬準備 食事前に必要な処置の準備と実施 | ・午前中の情報をカルテに記録 ・内服薬を間違えが起こらないよう注意しながら準備 ・簡易血糖測定の準備と実施 |
11:30~ | 食前に必要な内服薬の配薬、配膳 | |
12:00~ | 休憩 | |
13:00~ | 食事量チェックと食後薬の配膳 内服確認 口腔ケア | ・ 休憩中の患者の様子を確認 ・食事量と薬を飲んでいるか確認 ・介助が必要な患者には口腔ケア |
13:30~ | チームカンファレンス | ・ 看護師全体で患者の情報共有 ・看護計画の見直し、意見交換 |
14:00~ | 必要な処置準備、点滴作り | ・ 事前に必要な点滴を作成 |
14:30~ | 担当患者の部屋周り | ・心配な項目の状態確認や測定等 |
15:30~ | ナースコール対応、記録入力 明日の検査準備、申し送り準備 | ・1日の記録をすべて入力 ・翌日の検査の説明をしに患者訪問 ・その他日勤帯で残っている業務の整理 |
16:30~ | 夜勤勤務者への申し送り、終業 | ・夜勤帯勤務者に患者の情報を申し送り ・日勤帯でできなかった業務を依頼 |
このような流れで1日スケジュールが組まれています。
内分泌内科で働く看護師に必要なスキル
内分泌内科での治療は、投薬などによって行われることが多く、看護師はその投薬管理や前後の検査、その説明などを行います。
そのため、内分泌内科で働く看護師は特殊な検査に関する知識や技術の習得と血液データの知識を求められます。
内分泌内科で実施される特殊な検査に関する知識・技術
内分泌内科では視床下部・下垂体疾患、副甲状腺疾患、甲状腺疾患、糖尿病などの症例が扱われ、このような疾患は採血の他にも特殊な検査を行うことがあります。
そのため、内分泌内科で働く看護師は、それらの検査に関する知識や、また血液検査データの見方なども勉強しておく必要があるでしょう。
疾患別に関係する血液データ項目とその数値に対する理解力
内分泌疾患の治療は、内服などの内科的治療がメインになるので、採血による数値チェックは患者状態の把握のために必須になります。
したがって、疾患別に関連する血液検査項目とその数値を読解していく事が患者の病状や治療効果の評価に直接つながっていきます。カンファレンスも、データを基に患者の病状評価をしていくため、このスキルは内分泌内科では必要になります。
4.内分泌内科で働く看護師の年収・給与の特徴

内分泌内科で働く看護師の年収・給与の特徴は以下のとおりです。
- 病院勤務の場合、残業が減った分が少なくなる程度
- クリニックは月給よりも年俸制としていることが多い
- 病院では年々昇給がある
- クリニックや開業医では昇給がほとんどない・退職金制度を設けていないこともある
内分泌内科で働く場合、病院勤務とクリニック勤務との給与の違いあると知っておいたほうがいいです。
給与が高いのはクリニックより病院
基本的に、看護師が内分泌内科で働くなら病院の方が好待遇です。昇給の差で病院とクリニックは年々年収が大きく開いてくるでしょう。
ポイント!

今後結婚・出産・育児を考えていく時に、病院勤務では当たり前にあった育児休暇制度はクリニックでは使えないと思っていたほうが良いです。
5.内分泌内科で働く看護師のメリット

内分泌内科で働く看護師のメリットは、他の科と比較すると比較的イレギュラーな業務がないということです。また、患者1人1人とじっくり向き合いながら業務を行えるのもメリットです。詳しく見ていきましょう。
内分泌内科ではイレギュラー対応が少ない
内分泌内科で扱う疾患は急激な体調の変化をきたす疾患よりも慢性的に病気が進行することが多いので、管理や投薬・生活習慣をきちんと指示通りに守っていれば急変はほとんどありません。そのため、気持ちにゆとりをもって業務を行うことができます。
患者としっかり向き合える
内分泌科の場合は長期的な入院や通院をする患者が多いので、看護師にとっても患者ひとりひとりとコミュニケーションを取りやすい診療科になります。そもそも、内科はちょっとした病状の変化を察するためにも、普段からコミュニケーションを取っておくことは大切です。
患者としっかり向き合った看護がしたい、という志を持つ看護師には、非常にやりがいのある職場だと言えるでしょう。糖尿病など、内分泌疾患に関する知識も身につくため、今後内科や糖尿病科に勤務することになっても役に立ちます。
経験と知識が今後のキャリアステップにつながる
糖尿病に関しては、今後もしばらく罹患率の上昇傾向が続くと考えられるため、この分野でのスキルを磨いておけば、次の転職において有利になる可能性があります。
糖尿病には網膜症や腎症、神経障害などの合併症の危険がつきまとうため、これらの疾患に関する知識・技術・教育力を身につけることができますし、糖尿病以外にも、バセドウ病や副腎腫瘍、原発性アルドステロン症などの疾患を抱える患者の看護にあたることで、経験を積むことができます。
ポイント!

患者指導は看護業務に必ず必要になります。内分泌内科では毎日のように行うのでその指導力が自然に養われるのでスキルアップに繋がります。
ルーチンワークが多いため忙しくない
内分泌内科での看護業務は、決められた時間で行うことが多いため業務がルーチンであり忙しくありません。異動や転職で初めて内分泌内科で働く場合にも日常業務自体は覚えやすいです。
ポイント!

業務に慣れると忙しくない時間帯に必要な記録を残せるため、定時で従業することができるようになり、急な入院などなければ残業しなくてすみます。
明るい雰囲気の中で働くことができる
内分泌内科は、子どもから高齢者まで幅広い年齢層の方が多い上、基本的には自分で自分のことが行える患者がほとんどです。そのため、患者同士も仲間を作りやすく、笑い声の耐えない明るい雰囲気の病棟です。
また、基本的に急変がなく忙しくない病棟のためか、優しい・話しやすい・明るい先生が多いです。医師と看護師が話しやすい雰囲気の病棟は、看護同士も風通しがよく人間関係も良くなります。
6.内分泌内科で働く看護師のデメリット

内分泌科で働く看護師のデメリットは比較的少ないのですが、もちろん看護師の言うことに従ってくれる患者ばかりではありませんし、なかなか信頼してくれない患者もいますから、それをストレスに感じてしまうとデメリットになってしまいます。
患者教育の際は忍耐力が試される
患者とのコミュニケーションが鍵になる内分泌内科では、患者教育が苦痛になってしまうこともあります。例えば糖尿病の場合、食事制限など患者にとって辛い治療法が多いと看護師に八つ当たりしたりきちんと治療法を実践してくれなかったりして、看護師としての忍耐力や人間性が試される場合もあります。
年齢層の高い患者への教育は難しい
糖尿病疾患を患う患者は年齢層の高い患者が多くなってしまうので、上手かつ毅然とした態度で指導していかなければならないことに難しさを感じる看護師も少なくありません。
完治して退院を見送るケースは少ない
内分泌内科の治療は、他科目と比べると「病気が完治して元気になった患者を見送る」というよりは、「これ以上悪くならないように現状維持に努める」という仕事がメインになるため、医療従事者としてのやりがいを感じにくいというデメリットもあります。
業務をテキパキこなすことが苦手になる
急変がなくルーチンワークが多い内分泌内科に慣れると、あわただしい病棟へ異動になった際に業務をテンポよくこなす事や、急な業務が入った時などの自分の動き方がわからない、時間がかかってしまうようになります。
つまり、スピード感をもって業務に当たることが苦手になります。
患者へのごまかしが効かない
年齢が若く理解力がある患者が看護対象になるので、わからない事や約束したことなど内容をごまかすことができません。認知症が多い病棟では可能な曖昧な患者への接し方が内分泌内科ではほとんど通用しません。
疾患に関係する血液検査項目が多く、難しい
内分泌内科では検査値を確認しながら病状を把握していきますが、項目がたくさんあり覚えるまでに時間がかかります。また、ホルモンは分泌場所が多く本当に奥の深い生理学になるので、病態生理を自己学習するのは難しいです。
ポイント!

わからないときは先生に直接聞くなど、教えてもらいながら勉強することが大事です。
7.内分泌内科で働いて楽しかったこと・辛かったこと

看護師が、内分泌内科で働いて楽しかったこと・辛かったことをご紹介します。
内分泌内科で働いて楽しかったこと
内分泌内科で働いて楽しかったことは、以下の通りです。
- 患者と密に関わることができたこと
- 看護計画を自分で考えることができたこと
- 患者と一緒に一喜一憂できたこと
このように、内分泌内科は患者との深い繋がりがやりがいに直結します。
患者との話や関わり自体が面白い
話ができる患者・若い患者が多いため世間話も多くなりますが、業務自体時間的に余裕があるため患者との関わりを持つ時間が多く確保でき会話を楽しめました。
自分がやりたい指導内容を自身で考えることができる
内分泌内科では、自分の受け持つ患者への指導の内容を自分がプランニング・実行・評価します。必要な資料を作成することも、やりがいが出ます。
自分が考えて一生懸命作った資料を退院時に大切に持ち帰ってくれたり、指導の後にベッドで見直してくれたりする患者を見ると本当にうれしかったです。
患者と病状について一喜一憂できる
患者が運動や食事等、自分の努力次第で病状が変わるのが内分泌疾患です。入院中は間食禁止・食事内容の制限・副作用が強く出る薬を継続的に内服するなど、なにかと患者に多くのストレスがかかります。
ですが、患者自身が努力した結果が検査数値として目に見えて結果につながると、患者とともに喜べることもこの科で働く楽しさです。
内分泌内科で働いてつらかったこと
内分泌内科で働いて辛かったことは、自分の病気を受け入れられない患者に対しての関わり方に悩んだことです。
内分泌内科の患者は完治できない病気にかかっていることがほとんどなので、患者はその事実を知ったときにとても落ち込みますし、受け入れるのに時間がかかります。最悪の場合、精神的に病んでしまい自殺をしてしまう患者もいるほどです。
少しでも患者の気持ちを楽にしてあげるためのケアをしなければなりませんが、解決の糸口を見つけるのがとても大変でした。
8.内分泌内科への看護師求人を探す際のポイント

患者が引き続き増加傾向にある「内分泌内科」への看護師転職は、基本的に歓迎される傾向にあります。
しかし、本当に転職を成功させたいのであれば、内分泌内科であればどこでも良いというわけではありません。どんなところに注意すれば良いのでしょうか。
専門性の高い治療に携わりたいなら「総合病院」へ
内分泌内科は総合病院にもクリニックにもあります。総合病院の場合、すぐには希望部署に配属されない可能性はありますが、専門性の高い高度な治療を学ぶことができます。
そのため、内分泌内科で何を学びたいのか明確にした上で、どちらか選択していくようにしましょう。
総合病院では「内分泌内科」で働ける保障はない!
通常、総合病院では必ず「内分泌内科」が設置されています。しかし、先にも述べたように総合病院の場合は必ずしも希望部署で働けるとは限りません。
どうしても「内分泌内科で働きたい!」というのであれば専門クリニックへ転職するか、転職サイトを利用して「内分泌内科」に空きがある総合病院を見つけていくようにしましょう。
オープニングで働きたいならクリニックが探しやすい
内分泌疾患の患者は年々増加傾向となっているので、大きな病院だけでなくクリニックとして開業する医師も増えてきています。
そのため、新規オープンのクリニックの求人募集はかなり増えていますので、その際は、看護師専門転職サイト・一般的な求人広告・ハローワークで求人を探すと良いです。
まとめ

内分泌内科は長期的な入院や通院をする患者が多いので、も患者ひとりひとりとコミュニケーションを取りやすい診療科です。
そのため、「患者としっかり向き合った看護がしたい」という志を持つ看護師には非常にやりがいのある職場だと言えるでしょう。糖尿病などの内分泌疾患に関する知識も身につくため、今後内科や糖尿病科に勤務することになっても役に立ちます。
内分泌内科は、経験がない看護師・ブランクがある看護師でも比較的働きやすい科です。患者と深く関われる・楽しく明るい職場で働くことができる・ゆとりを持った勤務ができます。
また、疾患も専門性を追求すると奥が深く、専門看護師として働くこともできる領域でもあります。自分のライフスタイルともバランスがとりやすい上に、専門知識もさらに求めることもできる科ですので、興味がある方は働いてみることをオススメします。
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