遺伝看護専門看護師の資格取得と役割・メリットとは

今後、必要性が高まる可能性の高い分野のひとつとして遺伝看護専門看護師の認定資格あります。

この資格を取得した看護師は現時点ではまだ0名となっております。

遺伝看護専門看護師は、意思決定支援などの難しい局面に対応することも多くありますが、遺伝という世代を超えた関わりを持つことができる資格です。

ここでは、遺伝看護専門看護師について役割や必要なこと、メリット等について紹介していきます。

【遺伝看護専門看護師の資格取得条件】

  • 日本国の看護師の免許を有すること
  • 実務研修が通算5年以上あり、うち3年間以上は専門看護分野の実務研修(※1)であること
  • 日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計26単位または38単位)を取得していること
  • 認定審査(書類審査・筆記試験)に合格
  • 専門看護師認定証交付・登録
  • 5年ごとに更新(看護実践の実績、研修実績、研究業績等書類審査)

(※1)遺伝学的課題を抱えた、もしくはその可能性のある個人、家族、集団に対する遺伝看護の実務研修。

日本看護協会:資格認定制度「専門看護師」参照

【専門看護師の資格取得にかかる最低限の費用】

入試検定料 約5万円
2年間の学費 220万円
教材費 約10万円
専門看護師の登録費用 約5万円
   合計約240万円

※ここに記載してある費用に加え、無給となる2年間の生活費用も考慮する必要があります。
病院によっては資格取得の斡旋をしてくれる施設もあります。詳しくは専門看護師支援がある病院への看護師転職で知りたい6つのポイントをご参照ください。

1.遺伝看護専門看護師を取得している看護師はいない?

取得している看護師はいない

遺伝看護については、「日本遺伝看護学会」が行っていたものです。

日本看護協会の専門看護師資格の認定は2016年11月に専門分野に特定されました。

そのため、「認定開始年月が2017年12月見込み」としているため、専門看護師の資格に認定されていますが遺伝看護専門看護師は誕生しておりません。(2017年10月現在)

 

日本遺伝看護学会について

日本遺伝学会は、

臨床・教育・研究を通して、遺伝に関わる保健医療における看護職の役割を明確にし、遺伝看護サービスの質の向上を図ることを目的。(日本遺伝看護学会より)

として運営をしている学会です。

「遺伝看護」に重きを置いて、看護の在り方と遺伝看護においての看護師の質の向上を目指すものです。

 

2.遺伝看護専門看護師とは

遺伝看護専門看護師について調べる女性

遺伝看護専門看護師の対象ケアや特徴、主な役割には、どのようなものがあるのでしょうか。

 

(1)遺伝看護専門看護師の定義

日本看護協会では、遺伝看護専門看護師を「対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定支援とQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行い、世代を超えて必要な医療・ケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献する(日本看護協会)」ものと定義しています。

 

補足説明!

ポイント

遺伝が関わる疾患は60%の人が罹患するとされており、稀なことではありません(信州大学医学部附属病院遺伝子診療部)。

 

(2)遺伝看護専門看護師の対象ケア

遺伝が関わる疾患は、主に筋ジストロフィーなどの単一遺伝子疾患と、がんや糖尿病、口唇・口蓋裂などの多因子疾患の2つに分類されますが、遺伝看護専門看護師は生前検査、発症前検査を含め、単一遺伝子、多因子疾患の両方、特に家族性腫瘍、先天異常、神経難病、を対象にケアにあたります(有森,2012)。

 

遺伝医療チームと協働する

遺伝看護専門看護師は、

  • 臨床遺伝専門医
  • 遺伝カウンセラー
  • 薬剤師

等、遺伝医療に関わるチームの一員として横断的に患者ケアにあたります。

 

(3)遺伝看護専門看護師の特徴

遺伝看護専門看護師の特徴は、対象者の診療科も多科にわたり、病期も発症前から終末期ケアまで広範囲に及ぶことや、症状をもつ患者のみではなく、次世代を含んだ血縁者まで対象者がおよぶことです。

 

(4)遺伝看護専門看護師の主な役割

臨床では、意思決定支援、困難事例へのケア、社会資源等、患者・家族の生活をより快適にする情報の提供、他臨床家への教育・相談活動等が主な役割として挙げられます(日本遺伝看護学会:看護の役割、有森 他, 2011)。

 

3.遺伝看護専門看護師の期待される役割

患者や住民の相談に乗る遺伝看護専門看護師

遺伝が関与する疾患が多岐にわたるにも関わらず、人々にとって身近な医療者である看護師は、それらの人々のケアを十分に行う制度を設けてきませんでした。

ケアを十分に行う制度がない状況の中で、遺伝看護専門看護師が期待される具体的な役割を以下に示します。

 

(1)医療施設、地域等における患者や住民を対象とした最初の窓口

遺伝看護の対象者は、発症後の患者のみではないため、活躍先は医療機関に留まらず地域にも及びます。

そのため、気軽に相談できる場として遺伝看護専門看護師は活躍できるでしょう。

 

(2)遺伝医療チームの一員として横断的な働き

遺伝子疾患は多科に及ぶことから、診療科をまたいで患者、医療者から相談や遺伝に関する質問をよく受けますが、最新の知識がないため臨床家では答えられないことも多いです。

そのため、臨床家をサポートする立場として遺伝看護専門看護師が活躍することでしょう。

 

4.遺伝看護専門看護師になるために必要なこと

対象者と長期間にわたって向き合う遺伝看護専門看護師

遺伝看護専門看護師にはどのようなことが必要なのでしょうか。

 

(1)対象者・血縁者と長期間にわたり向き合う根気強さ

遺伝医療は、これから更に発展する可能性のある分野で華やかにも見えますが、有効な治療法のない遺伝疾患もあり、そういった患者を自分の生涯を通して支える分野でもあります。

そのため、対象者や血縁者と長期に渡って向き合う根気強さが、遺伝看護専門看護師には必要な資質と言えるでしょう。

 

補足説明!

ポイント

体の設計図である遺伝情報は生涯変化せず、単一遺伝疾患は特に生涯を通して抱える疾患です。

 

(2)心理的ケア等の課題に精通していること

遺伝子検査は、将来の発症をほぼ確実に予測できることがあり、発症がほぼ確実となった際の対象者への心理的ケア、それ以前の検査を実施するかどうか正解のない選択に対し患者が納得してケアを受けられるように支援します。

 

血縁者まで影響すると考慮して決定する慎重さが求められる

遺伝子検査を行うこと自体が、その対象者のみではなく血縁者まで影響が波及することも考慮して決定する慎重さが求められます。

 

補足説明!

ポイント

発症がほぼ確実とわかっても、予防法や完治に至る治療法がない場合があり、発症前の患者・家族へのケアも対象となります。

 

5.遺伝看護専門看護師になるメリット

医療者から頼られる遺伝看護専門看護師

遺伝看護専門看護師になるメリットには、「頼られる存在になる」「身近な人に最新の情報が与えられる」等があります。

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

 

(1)対象者、医療者から頼られる存在になる

遺伝医療分野は、あまり注目されてこなかった分野ですが、研究が進むにつれて遺伝看護の専門家を必要とする人が増え、需要が伸びる可能性があり専門看護師として活躍できる場も増えるでしょう。

そのため、「遺伝に関する知識が浸透していない」「遺伝自体が世代を超えて関わる事柄である」等のことから、医療者や対象者から頼られる存在になります。

 

(2)身近な人にも最新の情報が与えられる

出生前から死に至るまでのライフサイクルを通して、家族の遺伝性疾患の罹患や出産など、遺伝に関与する出来事を何度か経験する人も身近に多くいるでしょう。

臨床遺伝学に精通している看護師は少ないため、遺伝に関与する出来事を経験した人等多くの人に対して、最新の情報を届けることができます。

 

まとめ

参考文献は、以下の通りです。

遺伝看護専門看護師について説明してきましたが、いかがでしたか?

この記事を読んで興味を持った看護師は、是非、初の遺伝看護専門看護師を目指してみて下さい。

アンネ

【資格:看護師、保健師】

がん専門病院で勤務後、がん・緩和ケア分野リーダーシップコース修士課程を海外で修了。その後、年300件以上の在宅看取り件数のある在宅緩和ケアクリニックで勤務。施設訪問も経験あり。現在は臨床研究をメインに活動中。少子高齢化に伴う経済状況の悪化、医療崩壊を懸念中。

看護師になった後も、どう仕事をしていくか選択肢は幅広くあります。道の作り方は自分次第だと思っています。嫌なことも、迷うこともたくさんあると思うので、皆さんに少しでも役立つような情報を発信できればと思います。

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