社員の健康に関心を持つ企業は少なくありません。最近は特に、働く社員の健康を守るのは、企業の役割のひとつといっても過言ではない時代となりました。企業がよりパフォーマンスを高めるためには、社員の健康はなくてはならないものです。そんな意味において、企業内看護師の役割はとても大切です。
社会の風潮も後押しとなって、社員の健康管理に本腰を入れる企業も増えているようです。そこで今回は、企業の中における健康管理室で働く看護師の仕事内容についてご紹介します。
1.健康管理室について
2.診療所と健康管理室の違いとは?
3.健康管理室の主な仕事内容について
4.健康診断では細かい所にも目を配る必要がある
5.健康管理室の看護師の主な役割について
6.診療所の保健師や看護師との協調性は大切
1. 健康管理室について

企業の中でも特に大企業などであれば、社内に診療所を設置している場合も少なくないと思います。私が勤務していた企業も建物内に診療所を備えていました。
社員の健康診断を担う部署
診療所とは別に独立した形態をとり、社員の健康診断を担う部署として健康管理室が新しく設置されました。
おそらく、企業の中には診療所の業務の一環として、名称は違っていても同じような業務内容を行っている部署もあるのだと思います。
診療所と健康管理室は形態は違っても基本的なところはほぼ同じ
社員の健康を守るということに関しては、診療所にしても、健康管理室にしても、形態ややり方は違っていても基本的なことについてはそれほど変わらないのではないかと思うので、参考にしてもらえればと思います。
2. 診療所と健康管理室の違いとは?

私が勤務していた健康管理室は、所長1人と看護師が1人、その他事務の女性が2人ほどのこぢんまりとした職場でした。一方、同じ敷地内というか、ほぼ同じ空間で業務を行う診療所には専属のスタッフとして常勤の医師が1人と保健師が1人、そして看護師が2人勤務していました。
診療所と健康管理室の業務は明確に分けられている
健康管理室は、社員の健康診断を独立した部署として行い、一方の診療所は、健康管理室とは違って、社員の日常的な診察や全般的な健康管理などを行うのが主な業務でした。
診療所での業務はかなり広い範囲で行われている
敷地内には工場があって工場で勤務する社員もいたので、業務中にけがをした社員の処置を行ったり、職務中に体調が悪くなった社員の治療や看護をしたり、と診療所での業務はかなり広い範囲で行われていました。
健康管理室の看護師が診療所の業務に関わることはほとんどない
健康管理室の看護師がこれらの業務に関わることはほとんどなく、また逆に、社員の健康診断を行う際には、診療所のスタッフが健康診断やそれに付随する業務を手伝うことはほとんどありませんでした。
ポイント!

健診で行うさまざまな検査は、健康管理室の看護師と外部の検診機関のスタッフとで実施していました。このようにして、診療所と健康管理室の業務は明確に分けられていました。
3. 健康管理室の主な仕事内容について

健康管理室の主な業務は、定期的に行う社員の健康診断と、その結果の判定や検査値から異常を拾いあげ、また異常があった場合の対応などの他、病気の予防や早期発見などに努めることです。
つまり、定期的な健康診断を通して、社員の健康状態を管理するというのが健康管理室の看護師の役割です。
検査を受ける社員を待たせていはいけない
健康診断は、社員数が多い場合、数週間続きます。健診内容は自治体などが行う一般的なものと同じですが、社員は健診を受ける日程が事前に組まれていているので、決められた日に受けなければなりません。
そのため、健康診断を行う上で一番注意しなければならないのは、検査を受ける社員を待たせてはいけないということです。というのも、社員は健康診断のため、仕事を一次中断して健診会場にやってきます。「このグループが終わったら次はこのグループ」というように、時間毎に数人単位のグループとしてローテーションが組まれているからです。
健診の時間が延びると健診を受けにきた社員の業務に支障が出てしまう
特に、工場で勤務する社員に関しては、健診を受ける社員が抜けた時間をきちんと計算されているとのことだったので、健診に予定以上の時間がかかってしまっては、業務に支障を与えてしまうことになってしまいます。そのため、健診は常に効率良く進めなければなりません。
健康診断の検査項目
健康診断の検査項目としては、身長・体重測定、血圧測定、視力検査、握力検査、聴力検査、心電図、眼底検査、胸部X線検査、胃のバリウム検査、採血、医師の診察などがあります。
その他にも便の潜血検査があって、これは提出してもらうだけなのですが女性社員の場合、受け取る時には必ず、検査日が月経中だったか否かを確認しなければならないといった様に、健康管理室でのきまり事を聞き取ることが必要でした。
確認事項を抜かさないよう配慮することも大切
確認を看護師ひとりですることは難しいため、事務の女性にお願いして確認してもらうなど、確認事項が抜けないような配慮も必要でした。そういう意味においては、事務の女性たちとのコミュニケーションも必要です。
何かひとつでも漏れがあると、健診が終わった後に再度聞き取りを行わなければならないこともあるので、社員の方にとっても、こちらの健康管理室側にとっても手間のかかることになってしまいます。何より、業務に支障を来してしまうので、できる限り現場で抜けがないように注意しなければなりません。
4. 健康診断では細かい所にも目を配る必要がある

健康診断の際、看護師は全体の流れを常に把握しなければなりません。ひとつの箇所に社員が集中しないように誘導するのも看護師の役割です。
検査のどこかで列ができるようなことがあれば、すぐにその検査の箇所に入って手伝いをしなければなりません。
健診会場では社員一人ひとりの様子も観察する必要がある
健診会場では、全体を把握すると同時に個人個人の社員の様子についても観察を行います。
体調を悪くしている人はいないか、長いこと検査を待っている人はいないか、などに注意を払います。
個々の社員の声に耳を傾け対応することも大切
中には、女性特有の病気で治療を受けている女性社員が、その病名を会社には知られたくないと相談されることもありました。こういった個々の社員の声に耳を傾けて、対応を取ることも健康管理室の看護師の役割です。
ポイント!

健診会場では社員に声をかけるなどしてコミュニケーションをはかります。日頃は、顔を合わせることが少ない社員の方々ばかりなので、健康診断の時は、コミュニケーションをとるいい機会となるわけです。
5. 健康管理室の看護師の主な役割について

健康管理室の看護師の役割は、病気の早期発見や病気の予防に努めることです。そのため、健診が終わってからが、いわば本番といっても過言ではありません。
健診を受けた順番に結果は報告されるので、全員の結果がそろうまでには多少の時間がかかりますが、検査の結果が戻ってきた順番にその値のデータをパソコンに入力していきます。
Excelの使い方は知っておいた方がいい
入力の速度を求められることはそれ程ありませんでしたが、エクセルの使い方は知っていた方がいいでしょう。
私の場合、エクセルが得意だったわけではありませんが、現場で実際にやっていく中で要領を覚えていきました。頻繁にパソコンやエクセルを使うようにしていると、結構自然に慣れていくものです。
積極的にExcelを使う機会を作り慣れていくことが大切
エクセルは苦手と思っている方や、使ったことがない、と思っている方でもそんなに心配することはないと思います。こういったものは使って慣れるしかありません。間違ってもいいので、できるだけ積極的に機会を作って使うことが重要だと思います。
データ入力と同時に検査数値の確認をしていく
データ入力もかなりの数がありましたが、入力しながら同時に検査数値に異常がないかを確認していきます。検査値に異常があれば、その段階でまず一次チェックとして拾いあげなければなりません。一次チェックの後にも、検査数値に関しては、異常の有無について何度かチェックを繰り返し行います。どんなに気をつけていても、抜けてしまうこともあるので慎重に確認してきます。
心電図の波形の異常をチェックする
健康診断の中でも、特に慎重に拾いあげていたのが心電図の波形の異常です。もちろん、最終的な判断は医師が行いますが、結構、心電図の特殊な波形などに関しては医師でも抜けてしまうことがあるようです。そのため、そこをカバーするのが健康管理室での役割のひとつでもありました。
心電図の波形など読んだことがない、という方もいるかもしれません。経験がないと不安になるかもしれませんが、いきなり心電図の波形を読まなければならないというようなことはまずないと思います。
おそらく研修など、何らかの研修の機会があるはずなので、そういった機会に勉強して身につけられるといいのではないかと思います。
出張先で必要な物品が不足しないよう気を付ける
企業の規模が大きければ出張を求められることも出てくるかと思います。
出張先での健康診断では、検査に必要な物品が不足しないように入念な準備が必要になります。例えば、採血の時に使うスピッツなどの備品に関しては、検査会社などに事前に注文しておくなどの準備が必要になります。
その他にも、出張先の企業内にある物品を把握して、健診時に使用できるかどうか、物品の数の確認など、スムーズに健診が行えるよう、先方の企業の担当者と事前に連絡をとって、十分な打ち合わせを行っておくことなども必要となります。
ポイント!

出張先で必要な備品がないと健診ができないので、そんなことにならないよう、事前の準備をしっかりと行います。
6. 診療所の保健師や看護師との協調性は大切

私が勤務していた健康管理室は、診療所とは全く別の部署として業務を行っていたことはお話したと思います。
診療所と健康管理室の業務は明確に分けられていたので、責任の所在もはっきりとしていました。責任の所在がはっきりしているのはいいのですが、そのため、診療所のスタッフは極力、健康管理室の業務に関わらないという意識もあったようでした。
業務が違ってもどちらも医療従業者なので目的は同じ
病院であれ、企業であれ、どこの職場にもあるように、考え方の違いなどを背景とした衝突が起こることもありました。実際、診療所からの圧力を感じることもありましたが、大切なことは社員の健康を守ることなので、所長と共に妥協することも少なくなかったことを覚えています。
同じ医療従事者なので、診療所であれ、健康管理室であれ、目的は同じだと思いますので、良好なコミュニケーション能力と、協調性は大切になると思います。
まとめ
健康管理室は企業によって名称が違っていたり、業務内容が違ったりしているかも知れませんが、基本的なことは変わりなく、社員の健康を守ることが看護師の役割です。
診療所の業務と重なる部分もあるかも知れませんが、主に健康診断によって得られた検査結果を管理して、病気の発症を予防したり、早期発見を促したりすることが主な業務となります。
社員の方とはなかなか顔を合わせる機会が少ないので、健康診断の時は、積極的に声をかけて社員とのコミュニケーションを図るといいでしょう。
診療所から独立した部署として業務を行う場合、診療所のスタッフとのコミュニケーションをとって、日頃から良好な関係を築くことが必要です。
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