モジュールナーシングはモジュール、つまりチームで患者の看護を行うという看護方式の一つで、看護師人数が少ない日本で開発された看護方式です。日本国内の病院でも、この看護方式を採用する病院が多くなっています。
モジュールナーシングは、従来の「一人の看護師が1人の患者さんを専属で担当する」というプライマリーナーシングに、機能別看護(チームナーシング)を組み合わせ、両方の良いところを取り入れた看護方式となっています。
それでは、モジュールナーシングの詳細やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
1. モジュールナーシングとは

機能別看護方式の場合、注射・点滴管理・バイタルチェックなどを1人の看護師が全て行うわけではなく、注射係・点滴係・バイタル係・清潔ケア係といったように、1つ1つの看護業務ごとに担当を決めていきます。
モジュールナーシングの場合、看護師が一つのチームとして患者さんのケアを行いながらも、それぞれの看護師が自分ができる職務の範囲内で与えられた仕事をこなすようになります。
看護師のチームメンバーが固定されている
モジュールナーシングは、看護師チームが単位(モジュール)として一人の患者を担当するということが特徴です。
チームナーシングもチームメンバーが固定されていますが、病室でチームが固定されている点がモジュールナーシングとは異なる点です。
また、1人の患者に対するメンバー1人ひとりの責任の重みが変わります。
ポイント!

一般的には、チームが担当する病室の患者が他のチームに移動した場合には、他のチームの看護師が担当することになります。
患者の担当ナースが複数いる
モジュールナーシング(型看護方式)の場合には、担当看護師が複数いることも特徴の1つです。
担当の看護師が複数いることは、患者や看護師にとっても、問題が発生した際に対応してくれる看護師が必ず存在するため安心しやすいでしょう。
ポイント!

プライマリーナーシングは1人の患者に対し、1人の担当看護師が基本ですが、看護師の人数が限られる病棟では、患者が入院から退院まで1~2回しか担当しないことともあります。
モジュールナーシングの注意点
一人の患者を受け持つ看護師として、どの情報が大切でどのようにケアを統一するかを明確に決めておかなければなりません。
結果として「いつもとやり方が違う」「その話は○○さんに伝えた」ということになり、患者の不信感につながるため注意が必要です。
一人の患者を複数の看護師で受け持つことは、自分がプライマリーナースである意識を持ちつつ、自分が担当できない時には、チームメンバーが自分と同じ看護を提供できるようにすることが必要です。
そのため、スタッフ間の能力によって、どこまで詳しくケア方法を説明する必要があるかを、チームスタッフ同士も理解しておきましょう。
2. モジュールナーシングの5つのメリット

モジュールナーシング導入のメリットをまとめると以下のようになります。
- ケアの質が偏りにくくなる
- 看護師が協同して看護を提供できる
- 看護師1人にのしかかるプレッシャーが減る
- 職場のチームワークが生まれる
- 医療事故が減る
上記のように、モジュールナーシングにはチーム体制ならでのメリットがあることが分かります。
(1)ケアの質が偏りにくくなる
モジュールナーシングは従来のプライマリーナーシングという看護方式と比べると、チームとして複数の看護師が1人の患者のケアに当たるため、看護師のスキルレベルによって患者のケアの質が偏りにくくなります。
患者は24時間看護師の誰かに相談できる
モジュールナーシングでは、複数の担当看護師がいるため、患者にとっては、数名の担当看護師の誰かに24時間いつでも相談できることがメリットです。
相談できる看護師が増えることは、患者にとっての安心感につながります。
(2)看護師が協同して看護を提供できる
モジュールナーシングの場合には、担当看護師の1人ひとりが患者の受け持ちです。
そのため、看護師が協同して知恵を出し合い、看護計画を立案することができ1人で抱え込む負担が軽減します。
また、看護師が協同する事で看護の視点が広がり、新しい技術を自分のものにする機会も増えます。
ポイント!

プライマリーナーシング方式で担当看護師は、前提として1人の患者の看護プランについて責任をもって対処するため、プライマリーナースにとって、経験の少ない疾患や対応の難しい患者への対応が負担になりやすいです。
(3)看護師1人にのしかかるプレッシャーが減る
看護師1人にのしかかるプレッシャーも少なくて済むため、看護師資格を取得したばかりの新米看護師にとっては、できる職務をこなしながら仕事を覚えられるというメリットが期待できます。
(4)職場のチームワークが生まれる
チームには、新米でほとんど技術力がない看護師から、ベテラン看護師まで幅広いスキルの看護師たちがいます。そのため、モジュールナーシングを導入することによって、お互いのコミュニケーションを取りながら患者のケアをしてチームワークが芽生えるというメリットもあります。
プライマリーナーシングでは、ベテラン看護師と新米看護師とが1人の患者に対して同じように向き合う機会は少ないのですが、モジュールナーシングなら、看護を通して職場のチームワークが生まれ、それが職場の雰囲気改善やコミュニケーションの活性化にもつながります。
患者の情報が得やすいのも利点
モジュールナーシングの病棟では、必ず誰かが対応してくれるため、患者の情報を得やすいこともメリットです。
また、スタッフ1人ひとりが「自分が担当する患者」という意識があるため、病棟を訪問すると自分から患者の報告をしてくれます。
チームメンバー全てが、患者について把握していることは、他の看護方式ではないメリットだと言えるでしょう。
(5)医療事故が減る
チームとして患者のケアをすることで、1つのケアに対しても何層ものチェック機能が働き、うっかりミスを予防できる効果が期待できます。
看護師の職場では、うっかりミスが重大な医療事故にもなりかねませんから、何重にもチェックすることを習慣づけることができるモジュールナーシングは、高く評価されています。
3. モジュールナーシングのデメリット

モジュールナーシングの場合、患者にとっては誰が自分の担当なのか把握しにくくなるというデメリットがあげられます。
患者が入院してきた時に担当する看護師チームが挨拶をするというわけではありません。そのため、今日はこの人がケアしてくれたけれど、明日は別の人、となって患者にとっては混乱を招きかねません。
一方、スタッフ側には以下のようなデメリットがあります。
スタッフの実力が露呈しやすい
モジュールナーシングを行うことで、誰にどのぐらいの実力があるのか、はっきりしてしまうこともまた、モジュールナーシングのデメリットの一つと言えます。
何でも迅速にこなせる看護師もいれば、モタモタしたり要領が悪くて一つの仕事にも時間が掛かってしまうなど、看護師の力量がはっきりと露呈しやすい点は、モジュールナーシングのデメリットの一つです。
ポイント!

結果的に職場内でのイジメの原因となってしまったり、実力がないと判断された看護師にとっては働きにくい職場になってしまったりストレスをためる原因になってしまうというリスクもあります。
担当看護師同士の意見の相違がある
看護師が、患者に対する思い入れが強いほどその傾向があり、場合によっては看護師間で対立してしまうこともあります。
そのため、そのモジュールのリーダーは1人ひとりの看護師が持つ看護観を意識しつつ、スタッフ同士が対立しないように情報交換やカンファレンスを実施する能力が必要です。
ポイント!

複数の看護師が受け持つことは、プライマリーナースとしてかかわりたい気持ちが強いスタッフにとって、他の看護師が患者の問題を解決しようとすることに納得できない場合があります。
チームメンバー全員が疲弊する場合がある
モジュールナーシングの病棟では、診療科ごとのモジュールナーシングの場合もあり、心身共に重い科の患者を担当するチームや対応困難例を数名抱えたチームは、疲弊しやすいことがデメリットです。
そのため、心身ともに重い科を担当するスタッフから「次は他のチームに移動したい」という声が上がる場合もあります。
負の連鎖も起こりやすい
入院から退院まで患者を受持つことは、患者や看護師によってもお互いの信頼関係が構築され満足感を得られる反面、同時に重い患者を抱えた時には、負の連鎖も起こりやすいことも原因の1つです。
そのため、チーム全体をフォローするサポート体制が重要です。
ポイント!

モジュールに振り分ける患者の基準を何にするかは、その病棟の特色が強く反映されるでしょう。
まとめ
現在、多くの病院でモジュールナーシングシステムが導入されています。
患者にとっては、担当看護師が多くいつでも安心して相談できますし、看護師にとっても問題を共有し解決方法を一緒に考えるスタッフがいることでプライマリーナースとしての負担は楽になります。
しかし、受け持つ患者が同時に重症化したときや対応困難な患者が重なったときは、チーム全体に疲労感や疲弊が伝わりやすい傾向もあります。
チームで常に情報交換を行い、スタッフ一人ひとりが持つ能力が最大限に発揮できるように入院患者を振り分けていくことが大切なポイントになる看護方式です。
若手の看護師の方で総合病院への転職を検討中の方は、ぜひ自分自身の成長のためにもモジュールナーシングシステムを導入している職場への転職をオススメします。
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