看護師の皆様は、「電子カルテインストラクター」をご存知でしょうか。
もちろん、看護師の資格がなくてもできる仕事ですが、「看護師であれば尚可」と言われています。
ここでは、私が実際に体験した「実際の仕事内容」や「看護師が電子カルテインストラクターの求人を探す方法」などについて詳しくご紹介します。
【目次】
1.電子カルテインストラクターの仕事内容
2.看護師が電子カルテインストラクターとなる意味
3.電子カルテインストラクターに必要なスキル
4.電子カルテインストラクターの給料事情
5.電子カルテインストラクターの求人の見つけ方
まとめ
1.電子カルテインストラクターの仕事内容

まず、電子カルテインストラクターの仕事内容や特徴についてご紹介します。
電子カルテインストラクターの仕事内容
電子カルテインストラクターの仕事は、主に3つの段階に分けられます。以下でそれぞれご紹介します。
第1段階:インストラクター研修(トレーニング)
第1段階では、電子カルテインストラクターが医療機関に出向く前に、電子カルテの特長や機能、操作方法を学びます。
第2段階:医療機関での操作研修
第2段階では、電子カルテインストラクターが実際に電子カルテを導入する医療機関に行き、スタッフを対象に操作研修を行います。
医師や看護師をはじめ、薬剤師、検査技師など各部門のスタッフ、医事課の職員等、電子カルテを使用する全ての職種が対象となります。
病院の規模にもよりますが、総合病院クラスの場合、概ね1回60~90分の操作研修を1日5~6回、2週間~4週間にわたって行います。
補足説明!

電子カルテ画面をプロジェクターに映しながら説明するメイン担当のインストラクターと、研修途中で操作がわからなくなったスタッフをサポートするサブ担当に分かれて業務をするのが一般的です。
第3段階:稼働立会い
第3段階では、インストラクターが電子カルテ稼働初日から、医療機関で立会いを行います。
複数のインストラクターやシステムエンジニアが各々、担当部署に分かれて病院スタッフをサポートします。
常に質問に答え、サポートを必要とする部署に駆けつけられるように、院内PHSを持ちます。
稼働立会いは2週間~3週間行いますが、医療機関のスタッフも電子カルテの操作に慣れてくるため、徐々にインストラクターの人数を減らしていきます。
日本全国出張がある
電子カルテインストラクターは日本全国の電子カルテを導入する医療機関に出向くため、出張があります。
操作研修も稼働立会いも数週間にわたるため、その間家を空けることが多くなります。
ホテル暮らしが続いた
日曜の夜から現地に入り、金曜の夜に帰宅する、という生活を3~4ヶ月続けたことがあります。
週5日間、ホテル暮らしという日々が続きました。食事にこだわりがある人や環境が変わると睡眠不足になりやすい人は、慣れるまで大変かもしれません。
稼動立会いの期間は時間外労働が多い
電子カルテインストラクターは稼働立会いの一定期間、時間外労働が多くなることを心に留めておくと良いでしょう。
稼働立会いの時は、朝は外来が動き出す前から待機し、夜も夜間の業務が滞りなく行えることを確認した後、1日の業務が終了となります。
システムトラブルが発生すると残業となる
電子カルテにシステムトラブルが発生すると、解決するまで業務が終わらないこともあります。
病院は24時間体制であるため、システムエンジニアはトラブルに備え、夜間も待機しています。
電子カルテインストラクターは、医療機関のスタッフがスムーズに電子カルテを使えるようサポートする仕事であるため、時間外労働は仕方ないことでしょう。
2.看護師が電子カルテインストラクターとなる意味

前述の通り、電子カルテインストラクターには、特別な資格は必要ありません。
しかし、看護師のように医療に関する知識があれば、仕事がより円滑に進むことは確かです。
ここでは、看護師のインストラクターが企業と医療機関の橋渡し役と言われる理由についてご説明します。
医療職種の仕事や立場を理解できる
看護師が電子カルテインストラクターに転身した場合、各々の職種の仕事内容や立場を理解したうえで仕事が進められます。
医師、薬剤師、検査技師、放射線技師、栄養士、理学療法士など、病院内の様々なスタッフと一番密接に連携を取って働いているのは看護師です。
専門用語、薬剤名、処置や機材の名称の理解などはもちろんですが、実際に医療スタッフとして働いた経験の中で培ってきたことは、何より強みになります。
システムエンジニアに医療機関側の要望を伝える
医療の現場を知る看護師の電子カルテインストラクターは、いわば「通訳」のような形で、医療機関のスタッフの要望をわかりやすくシステムエンジニアに伝えていくことができます。
電子カルテ導入に関わっているシステムエンジニアは、病院スタッフからの質問や要望があった場合、それがどのようなシチュエーションで必要となるのか等、イメージしにくいことがあります。
そのため、看護師の電子カルテインストラクターは、これまでの看護師経験を活かしそれを伝えることができるのです。
3.電子カルテインストラクターに必要なスキル

看護師が電子カルテインストラクターになるうえで求められるスキルについてご紹介します。
(1)コミュニケーションスキル・協調性
電子カルテインストラクターは、医療機関のスタッフ、一緒に仕事をするシステムエンジニアなどたくさんの人と関わる仕事であるため、コミュニケーションスキルや協調性が求められます。
医療機関のスタッフは、慣れない電子カルテに悪戦苦闘しています。
いつも質問しやすい雰囲気を作り、必要に応じてこちらから「大丈夫ですか」と声かけすることも必要です。
ポイント!

稼働立会いの時は、朝早くから長時間の勤務になることも珍しくありません。
一緒に仕事をする仲間たちとはねぎらいの言葉をかけ合い、良好な関係を維持していきましょう。
(2)ニーズを把握するスキル
電子カルテインストラクターは、医療機関のスタッフからの質問や要望、困っている内容を正しく把握することが大切です。
外来は次々と患者を診ていかなければなりませんし、ICU、手術室などは一刻を争う状況になることもあります。
そんな時に医療機関のスタッフのニーズをきちんと把握できなかったり、システムエンジニアにうまく伝えられなかったりすると、院内の業務が滞り、患者に迷惑をかけることになりかねないのです。
(3)創意工夫するスキル
電子カルテインストラクターは、どのように話すと理解してもらえるかを常に考え、相手の反応を見ながら工夫して丁寧に説明する必要があります。
操作研修では、「例えばこういうことはないですか」と実際に業務をしていると起こりそうなことを挙げ、その際、どのような操作をすると良いかを説明すると、「なるほど」という反応が返ってきます。
これこそが、看護師のインストラクターにしかできない説明なのです。
操作研修説明用のシナリオを作った
私は、自分で操作研修説明用のシナリオを作っていました。
操作研修中に病院スタッフとコミュニケーションを取りながら業務の様子を把握し、より現場に近いシナリオに改良していました。
少しでも電子カルテを導入した後のイメージがつくよう、工夫を重ねる日々でした。
パソコンの知識は必要かどうか
電子カルテインストラクターは、もちろんITの知識があるに越したことはないのですが、インターネットやメールが使用できれば十分と言われています。
パソコンに詳しい人でなくても、日常の業務の中で電子カルテは使えているのではないでしょうか。
点滴を実施したら「実施ボタン」を押す等、いつも業務で使う機能や操作を覚えてしまえば、パソコンが不得意な人でも業務に支障は出ません。
ただ、仕事を進めていく中で、少しずつ知識を増やす努力はしていきましょう。
ほとんどパソコンに触れたことのない人に一から説明する必要がある
医療機関のスタッフ、特に看護師の中には、ほとんどパソコンに触れたことのない方もいます。
稼働立会い時、看護師から「きゅうきゅうにゅういん(救急入院)は、どうやって入力するのですか」と質問されたことがあります。
ローマ字入力に慣れていない方やマウスを使うことに慣れていない方もいるため、本当に基本的なところから説明しなければならない状況になることも多々あります。
電子カルテインストラクターに向いている看護師とは
電子カルテインストラクターは、前提として
- 人前で話すことに抵抗がない人
- ハキハキと明るい口調で説明できる人
以上のような人が向いています。他にも電子カルテインストラクターに向いている人の特徴を以下でご説明します。
誠実で丁寧な対応ができる人
医療機関のスタッフの中には、「電子カルテでこういうことはできないか」、「こういう機能を付けてほしい」など、無理難題を言ってくる人や、うまく操作できないことにイライラし、攻撃的な態度を取る人もいます。
そういう場合も冷静に、誠実で丁寧な対応ができる人が電子カルテインストラクターに向いていると言えます。
また、医療機関のスタッフは電子カルテを取り扱う企業にとって「お客様」です。言葉遣いやマナーに配慮しながら仕事ができることが求められます。
4.電子カルテインストラクターの給料事情

電子カルテを取り扱う企業で仕事をするインストラクターの気になる給与についてご説明します。
経験を考慮してくれる企業もある
電子カルテインストラクターは医療資格をもたない人もなれる仕事です。そのため、給与も一般社員と同じと考えたほうがいいでしょう。
しかし中には、病院のように「職務手当」はないものの、看護師資格や医療機関での経験を考慮して給与を決めてくれる企業もあります。
年齢や能力にもよりますが、正社員の場合、概ね月収20~30万円+手当、派遣社員の場合は、時給1,500円~2,000円ぐらいが一般的な給与です。
手当はしっかりチェックする
電子カルテインストラクターの給与の手当て欄はしっかりと確認しましょう。
電子カルテインストラクターは、とにかく出張、残業、休日出勤が多い仕事です。
そのため、出張手当、時間外手当、休日手当、勤務時間によっては、早朝手当、夜間手当などが支給されます(各企業で規定があります)。
特に出張手当は、日帰り出張と宿泊を伴う出張で金額が異なり、また出張先までの距離により金額が決まっていることが多いため、チェックが必要です。
5.電子カルテインストラクターの求人の見つけ方

看護師が電子カルテインストラクターの求人を見つける方法についてご紹介します。
「看護師」というワードにこだわらずに探す
電子カルテインストラクターは「看護師」としての求人は稀ですが、医療機関での勤務経験者という枠で応募が可能です。
そのため、「看護師」というワードにこだわらずに求人を探しましょう。
補足説明!

電子カルテインストラクターの求人は、正社員の募集はもちろん、派遣社員としての募集もあります。
看護師求人サイトのアドバイザーに相談する
自分で電子カルテインストラクターの仕事を探すのが難しい時は、看護師求人サイトのキャリアアドバイザーに相談してみましょう。
大手の求人サイトは、看護師部門だけでなく一般の求人部門も持っているため、電子カルテインストラクターの求人の有無を調べてくれる場合があります。
私が電子カルテインストラクターになったきっかけ
私が電子カルテインストラクターになったきっかけは、登録していた看護師求人サイトのキャリアアドバイザーからの紹介でした。
「講師経験があり、人前で話すことに抵抗ない」、「パソコンができる」、「長期出張が可能」など、私の経歴や状況に合っているということで応募を提案されました。
看護師求人サイトには、非公開求人などもあるため、キャリアアドバイザーに相談してみると良いでしょう。
まとめ
看護師というと、病院の中で医療行為をし、患者の生命を守るイメージがありますが、看護師の電子カルテインストラクターは医療関係者のひとりとして別の角度、立場から医療現場をサポートし、患者サービスに貢献できます。
医療機関のスタッフや一緒に働くシステムエンジニアから頼りにされる仕事ですが、電子カルテインストラクターになる前に、出張や残業などの労働条件、給与面を考慮し、自分のライフスタイルと照らし合わせてみることが必要です。
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