我が国では少子化の影響により比較的大学に入学しやすい時代に突入しました。ここ数年では高齢化社会に伴う看護職不足の懸念を受け看護学部の新設、看護大学の開学が続いています。
また高学歴思考の影響もあり大学院へ進学する方も多くなってきています。大学病院に限らず総合病院やクリニックで勤務されている看護師さんの中にも大学・大学院を卒業された方がいるのではないでしょうか。
そこで今回は筆者の体験談を元に大学院進学と看護師の仕事との両立について比較をしながら述べてみたいと思います。
1.看護師が大学院進学するメリットについて
2.看護師が大学進学するデメリットとは?
3.看護師の仕事と大学院進学を両立するメリット
4.看護師が仕事と大学院進学を両立するデメリット?
まとめ
1.看護師が大学院進学するメリットについて

進学して気が付いたことは、大学院での勉強は非常に気力・体力を使うものでもあります。しかし、学ぶことは非常に身になることが多いです。ここでは大学院に進学するメリットを紹介します。
先行研究を元に研究テーマを論述するため考える力がつく
大学院では自身の研究テーマに関する多くの論文を読み込むことから始まります。例えば、感染対策、退院支援、看取りなどの論文です。そしてそれらの先行研究を元に更に発展的に且つ新規的な視点をもって論述していきます。
論文の最終提出する頃には文章力・論理性・表現力が備わる
作成する論文は常に教授の指導が入りますので、論文を最終提出する頃には文章力・論理性・表現力が備わるようになるでしょう。完成した論文は修士課程では大学図書館へ、博士論文は国会図書館へ保管されますので大切な財産となります。
職場によっては給与が上がる場合がある
初任給は最終学歴に反映されるとはいえ、大学院修了者が必ずしも大幅に給与が上がるわけではなく職務手当という形で給与に反映されるという施設もあるようです。では、どんな時に給与が上がるのか例えを2つあげてみます。
- 看護研究の指導的立場を通じて学会での発表に貢献する
- 専門看護師の試験に合格したことで看護ケア加算の対象になる
上記のような場合など、病院側に診療報酬上の利益に繋がることが条件との場合が多いようです。
自分の周りの環境やそれまでとの扱いが大きく変わる
自身は要領が悪く先輩には叱られ、後輩にはフォローされる日々でしたが大学院修了者であると明らかになってから叱られる頻度も減り、何気ない自分の発言がケアに取り入れられたこともあったように記憶しています。
ポイント!

周りの看護師やスタッフから相談される機会も増えるため、自分の自信にも繋がるでしょう。
2.看護師が大学進学で感じるデメリットとは?

大学院への進学は大変だと頭では分かっていましたが、実際に通い始めると想像よりも苦労する場面は多々ありました。そこで、ここでは私が感じた大学院のデメリットについて述べてみます。
大学進学にはたくさんの費用がかかる
大学院正規生となる場合、大学にもよりますが入学金・授業料・施設整備費を合わせて年80万~150万程費やします。この費用に加え、大学までの交通費や自身の研究活動に必要な学会参加費やパソコン・スマートフォン等の通信費、夜食や院生交際費を含めると莫大な金額になることもあります。
ポイント!

大学院で勉強するために必要なものを揃えるためのお金とはいえ、費用の捻出には慎重に考えていただきたいものです。
教授との人間関係を良好に保つことが大変
入学の可否を決めるのも教授、卒業までの単位を与えるのも教授、論文が通るように教授会に意見を述べるのも教授。そうです、大学院は大学とは違い教授の研究室に入り、その教授の元で研究をしていくことになるため教授との関係性が大学院修了には大きく影響します。
社会人としての基本的なマナーは守ることが大事
教授と良い関係を築くためにも、挨拶をする、課題提出の期限は守る、お礼を述べるといった社会人としての基本的なマナーは守っておきたいものです。
論文作成には体力も必要になりとても苦労する
論文提出までの道のりはとにかく体力を使います。看護師の仕事との両立では尚更だと思います。看護師の仕事と論文提出をうまく両立してゆくポイントを2つ紹介します。
- 研究計画書は綿密に立案すること
- 必要な時には長期履修制度も活用すること
以上です。自分自身の体力や精神的なことなど、無理なく研究を行い論文提出まで乗り切ることが大切です。
ポイント!

同じ研究室生との情報交換も行い互いに声を掛け合いながら進行状況を確認していくのもよいでしょう。
3.看護師の仕事と大学院進学を両立するメリット

ここでは看護師の仕事と大学院進学の両立をする上でのメリットについて述べていきます。
仕事をしていれば安定的に生活費が得られる
苦労して大学院に入学しても自身の生活が成り立たなければ意味がありません。そのため確実に毎月安定的に収入が確保できる手段はやはり常勤の仕事です。大学院生活は何かとお金がかかるものです。自身の研究生活を支えていくために仕事は必要です。
シフトの希望休を優先的に聞いてくれる場合がある
勤務施設によって異なりますが希望休は月○○回までと制限されている所が多いと思います。しかし大学院では授業がありますし、学会参加や他院生との勉強会もあります。そのためどうしても希望する休みが多くなってしまいます。勤務表を作るのは師長さんであるため事情を説明すれば希望休について協力してくれるでしょう。
大学院で学んだ知識をすぐに仕事に活かせる
普段なかなか論文を見る機会はありませんが、多くの研究者が書いた論文には日頃のケアに関するヒントや気づきが述べてあります。そういった学びをすぐに実践できる場があるというのは常勤看護師の強みであると思います。
役に立ちそうな研究や面白い研究は率先して実践していこう
医療は日々変化すると言われているように、研究も日々変化していきます。役に立ちそうな研究、面白い研究があればすぐに実践していきましょう。
4.看護師が仕事と大学院進学を両立するデメリット

大学院の勉強と看護師の仕事は無理なく両立することで、大きなメリットを得られます。しかし、物事を両立することは簡単ではありません。大学院と看護師の仕事を両立して感じたデメリットについてお話しします。
プライベートな時間がなくなる
大学院終了までの2年間は多くのエネルギーと時間を必要とします。私は気分転換のために温泉旅行に行ったり、趣味を楽しんだりしましたが明らかに楽しむ時間は減ったと思います。
せっかくの旅行も論文で頭がいっぱいになってしまう
せっかく旅行に行っても「目的が結果と繋がっていないのではないか」「締切までに論文作成が終わるのか」とついつい論文のことを考えてしまったことがありました。そうなると旅行どころではありません。早々と帰宅しパソコンの電源を入れてしまう。研究にささげる2年間となるでしょう。
学業と仕事の両方に支障をきたす場合がある
二兎追うも一兎も得ずパターンです。看護師としての勤務は他の業種と比較をしても相当大変なものです。体力勝負の所がありますのでしっかりと計画を立てて、職場の理解を得ながら両立をして欲しいものです。
心身ともにかなり疲労する場合がある
人は疲れにより気持ちが沈めば免疫力が下がり病気やケガに繋がると言われています。急に風邪を引いたり、ボーとして階段の踏み場を外したり、交通事故にあったりと疲れが原因でこれらのことを引き寄せてしまわないように、しっかりご飯を食べ、しっかりよく寝ることを心掛けて欲しいと思います。
まとめ

いかがでしたか?こうしてみるとデメリットとしての苦労話の方が大きく書いてしまった印象があります。しかし教授指導の下、これまで縁のなかった学会発表や教授陣へのプレゼンテーション、院生同士の交流や研究室での徹夜等大学院に進学しなければ得られなかったであろう数々の経験が今日の支えになっている事を考えれば、僕自身無理して進学して良かったと思っています。
進学するのもしないのもその人の大切な人生です。少しでも参考になれば幸いです。
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