精神科閉鎖病棟の特徴と看護師の役割

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私は、看護師として就職1年目にして早々に、精神科閉鎖病棟に配属され、勤務してきました。私の勤務する施設は、わりと大きな医療法人の病院がバックボーンにある病院であるため統合失調症や重いうつ病、精神発達遅滞といった難しい精神疾患、状態の患者が多く入院されている所です。

精神科領域へ興味があって、今後、転職・転属などお考えの看護師の皆さまに、あるいは「閉鎖病棟なんて怖いし、暗そうだし興味ない」というような方にも、「閉鎖病棟」というやや特殊な職域での看護業務について、正しく理解し助けとなるよう、ポイントをしぼって解説して行こうと思います。

1.精神科閉鎖病棟にはベテラン看護師が多い

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私は卒後1年目での入職でしたが、子育て世代、子育てを終えた世代のベテラン看護師が多い印象を受けます。

ベテラン看護師の中には、若い精神科医師のことまでもよく気にかけ、「あのドクターには、できるって自信を持ってほしい!」など母心を発揮している場面がたびたび見られたりするのは、さすがだなと感じたりします。

 

精神科は他科と比べて復帰しやすい

精神科は、人を育ててきたその人生経験も活かせる職場ともいえるかもしれません。ですので、精神科は他科と比較してブランク明けでも働きやすい職場というのはイメージ通りと言えるでしょう。

そのため、強い母性を持ったベテラン看護師が多く活躍している場合が多いです。

 

排便ケアではベテランの勘がものを言う

精神科看護で忘れてはならないのが、抗精神病薬の連用の副作用による排便障害を起こしお腹がパンパンになってしまっている患者が多く見受けられることです。

下剤、浣腸、あるいは摘便など、その患者の状況にあわせて、排便ケア・処置を行っていくこと、日々計画して行くことは不可欠です。

便秘日数を確認する・腹部の状態を診る・下剤投与や浣腸の必要性をアセスメントする・どの与薬や処置にするか選定する…。こういったことひとつ取っても、場合によってはベテランの勘がものを言います。

精神科領域における排便障害という問題は、それだけシビアで複雑的な問題であるとも言えます。
 
 

2.精神科閉鎖病棟では男性看護師が必要とされている

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これは精神科一般に言えることかもしれませんが、他科とは違った特徴に男性看護師が多く配置されていることがあげられます。

日常業務に、患者を行動抑制しなければならない場合や力仕事が比較的多いこと、またイレギュラーなことですが、突如暴れだすような患者への対応を想定して男性看護師の配置を多くする傾向があるといえます。

 

精神科はとても体力が必要な科

夜勤看護師たった2人で30名を越える患者のオムツ交換があったり、日中でも看護師数名だけで食事の配膳・下膳をし、さらに食事介助が必要な状態の患者が何名もいたり、ADL自立度が低い方への入浴介助など、体力を使う仕事だなと感じられる場面は多いといえます。

私もたびたび男性看護師の一員として力仕事や、場合によって暴力などの危険をともなう仕事を率先して引き受ける役回りを担うことになります。

常日頃そういった手を差し伸べるべき場面がないか目を光らせ、気をつけて行くことを自分に課しています。基本的なことですが、お互いさまの心を持ってうまく得意を活かし、業務を進めて行く姿が理想的でしょう。
 
 

3.精神科閉鎖病棟では常に「危険」を見抜く目が必要

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閉鎖病棟の中にも急性期、慢性期があり、私の勤務先は慢性期の精神科病棟です。

慢性期と言っても一般的な慢性期のイメージである健康レベルが高く、ADL自立の患者が多いというイメージとは少し異なり、現在はすっかり入院患者の高齢化が進み、ADL全介助・半介助レベルの患者が増加している傾向にあるのが現状です。

そこでは、一体どんな物がどんな状況で「危険」となりうるか、常日頃から予測と対策をしていく目が必要なのです。

 

精神科閉鎖病棟では鍵をつけることが必須

閉鎖病棟の特徴はまず何と言っても、安全への配慮のため、至る所「鍵」がかかるようになっていることです。窓・ナースステーション・清掃道具入れ・物品庫・浴室・非常階段への扉など、病棟スタッフはいつも鍵を持ち歩きます

あるとき、精神発達遅滞の男性患者がストレスからか、ホールに設置されたDVDデッキを、少しだけ開くようになっている窓のわずかな隙間から外のバルコニーへ放り投げてしまうという事故が発生しました。

幸いなことにけが人は出ませんでしたが、このようなことが起こらないように常日ごろから看護師が細心の注意を払っておくことが大事です。

 

鍵のかけ忘れや危険物の置き忘れに注意!

最初のうち慣れるまでは、うっかり鍵のかけ忘れや、あるいは病棟内への危険物(はさみなどの鋭利な物など)の置き忘れといったミスを決して起こさないよう注意が必要です。「危険物」は単に置き忘れられた物品だけにとどまりません。
 
 

4.精神科閉鎖病棟での看護師の役割

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よく言われる「医療行為・看護手技は多くはない」という印象は、わりとその通りと言えるかもしれません。しかし、精神科病棟内でも時々、状態が悪くなった患者に中心静脈カテーテルの挿入が決定され、挿入の準備、介助に看護師が付いたりすることもあります。

もちろんその施設にもよりますが、必要とされる看護技術、業務遂行能力も一定数はあるということに注意しなければならないということが言えます。

 

精神科では患者との「会話」がそのまま治療の一部となる

相手の言葉を傾聴し、相手を理解すること、そして日常から会話を充実させ、 可能であればできる限り患者と「仲良くなる」ことが大切なのです。精神疾患疾を有する方も人間である以上、見栄もあります。

普段は何も「妄想」などは起こっていない振りをして、いわゆる「普通」のように表層を装っている場合もあるのです。普段から何気ない他愛のない会話を繰り返し、仲良くなることで、その患者が普段は見せない心の内側を見せてくれるようになっていく場合があります。

 

精神科での実体験

一見して、精神症状が落ち着かれているような印象を受ける患者とよく話をして行くうちに、ベッド下などにペットボトルを大量に隠し持っていることを打ち明けてくれたこともありました。

ペットボトルを大量に隠し持っているというのは、わりと典型的な統合失調症などに随伴する「水中毒」の症候です。抗精神病薬の副作用である「口渇」に精神疾患自体から来る「こだわり」があいまって、非常に多量に水が飲みたくてたまらなくなる症状にもとづいた行動です。

何はともあれ、相手と仲良くなること、そして心の内を気軽に無理なく打ち明けてくれるという流れが、治療に大きく役立っていくことも少なからずあることを忘れてはなりません。
 

まとめ

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ここまで精神科閉鎖病棟の特徴についてお話してきました。精神科閉鎖病棟という職場環境の特殊性と、どのような考え方、心構えで業務にのぞんでいくべきかについて少しでもご理解いただけたなら幸いです。

基本的には患者の状態を理解し、その方のおっしゃっていることを「傾聴」し、身体的な問題にはその原因や経過の予測を立て、危険を予測して早め早めの対処をこころがける。こういった護の基本を行っていくことは他科と全く同じと言ってよいでしょう。

読んでいて、心身がタフでなければつとまらない現場とお考えになった方も多いかもしれません。それもまたよく言われることです。

「患者との会話を充実させるべき」などと言うのはたやすいですが、患者の中には長い入院生活の方も多く、10代・20代の人生初期から社会から隔絶されたような状況になっている患者も少なからずいらっしゃいます。

そういった方々のお話を聞き、さまざまな人生模様を垣間見る中でも、色々と感じ入り考えさせられることも多いことでしょう。自分自身が折れてしまわないタフさはたしかに求められる資質かもしれません。

しかし、何より大切なのは、人に接し、理解し、真に優しく接していくということに喜びを感じていくことであり、日々そのことの繰り返しが質の高い精神科看護につながっていくのかもしれません。
 

猫人

【東京都/30代・資格:看護師】

猫人=「ねこじん」と読みます。猫好きのナース男子です。30代・既婚です。大学病院、総合病院の経験を経て、現在は介護施設で勤務しています。看護師や医療に携わる人間のあるべき姿勢はどのようであるか?これからの時代にどのような対応が求められるのか?といったテーマに関心があります。日々の業務の細かなことからも、考えて発信する手がかりを探っていけたらいいなと思っています。

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