訪問看護師は病院での患者ではなく、主に患者の自宅に訪問して看護をするので、色々なカルチャーショックを受けることがあります。
ここでは、私の経験を元に病院勤務と異なる訪問看護師のあるあるをご紹介します。
初めて訪問看護師へ転職を考える方など、あるあるを通して「大変なこと」を楽しく理解していきましょう。
訪問看護師の「大変なこと」あるある
- (1)車の運転で事故に合いそうになる

訪問先の距離が離れていて移動時間がかかるとき、訪問時間に間に合わないと思うと車の運転が乱暴になってしまいます。
訪問看護師は意外と時間に追われているのです。そのため、危なかったという場面も多く経験します。
実際には、事故を起こさないよう、お互いに声を掛け合うことや、余裕を持って訪問できるように訪問組みをしています。
- (2)鬼気迫る現場の立会人になることがある
訪問してみると、急に具合が悪くなってトイレまで歩けず失禁したまま横になって待っていたり、夫婦喧嘩して険悪な雰囲気の真っ最中だったりすることがあります。
私は夫婦喧嘩の結果、負傷して警察沙汰、という現場に立ち会ったことがあります。
- (3)汚部屋でも果敢に進む

玄関から靴を脱いで靴下で上がるのを阻まれるほど、ゴミや異臭のある汚部屋の人は必ず何人かいます。
しかし汚部屋だからといって訪問しないで帰るわけにもいかないので、心の中では「きゃー踏んじゃった」と思いながらも大股で患者の元へ進むのです。
汚部屋だと事前に分かっているなら、スリッパを持参したり靴カバーを持参したりして対策します。
ほとんどの訪問看護師は、予備の靴下が必需品です。
- (4)ヘルパーさんへのお願いが難しい

ほとんどの患者は介護保険でヘルパーが入っているので、看護師とヘルパーとの連携は大切です。
でも、例えば褥瘡予防にお願いしたい体位の工夫や陰部洗浄後の軟膏塗布、内服薬の飲ませ方など看護師からお願いしたいことがあっても、
- 「ケアマネジャーを通してでなければできません」
- 「介護計画に記載されていないことは実施できない」
などと言われることもあります。
本当は、病状に合わせてその日から変更したいことでも、統制がとれないため手続きを踏む必要があるのは分かりますが、看護師としてはフラストレーションが溜まってしまうのです。
- (5)同じ話の繰り返しに1時間笑顔で応える
明らかな認知症がなくても、高齢になれば誰でも忘れっぽくなるものです。
ですから同じ話を何度も繰り返す人もいますが、初めて聞くような顔をしてリアクションをしてやり過ごします。
認知症があると、訪問時間中ずっと同じ話だったりしますが、笑顔で応えながらもテキパキと手を動かして仕事をこなすのはよくあることです。
- (6)狭い道を進むときは対向車が来ないよう祈る
訪問地域にもよるかもしれませんが、少し大通りから外れると都会でも「こんなところに家が?!」と驚くような山道に家があったりします。
片側がガードレールのない崖なことや、舗装されていない道など、対向車が来たらどこへ避ければいいのか不安になることも。
そんな道を通って訪問するときは、「対向車が来ませんように!」と祈りながら進みます。
訪問看護師の「お仕事」あるある
- (7)1人でなんでもこなす

1人で訪問して看護技術を提供するので、とにかくなんでも1人でこなさなければなりません。
1時間の訪問で「バイタル測定、浣腸、便処置、バルーンカテーテル交換、爪切り、体位交換、時間があればROM運動まで・・・。」
病院なら寝たきりの人の便処置や体位交換は負担がかからないよう2人体制で行うこともありますが、1人でいかに効率よくお互いに負担をかけずに行うか、が大事になってきます。
- (8)話を傾聴しているとなかなか帰れない
訪問看護は病院での看護に比べて、患者や家族とゆっくり話ができるところがメリットですが、ときどきデメリットになることがあります。
特に具合が悪くない方の訪問では、本人や家族の愚痴や悩み、分からないことなどを聞いていると話の腰を折れずに、なかなかやりたいことをやらせて貰えないことや、帰るに帰れないということもありがちです。
- (9)リハビリと称するマッサージ

訪問看護師も転倒予防のためのリハビリで筋力維持のための運動をすることや、軽い体操をすることがあります。
リハビリを始める前、筋肉をほぐすためにマッサージをしますが、運動が難しい方ではこれは果たしてリハビリなのか?!というような、リハビリという名のマッサージとROM運動を施行しています。
- (10)「ベテラン」の顔が必要
高齢の方は特に、若いというだけでも1人で大丈夫か、いつものようにきちんとやってくれるのか、と心配されます。
若く見えたとしてもベテランで、十分経験を積んでいるということを実際に言ったり、ベテラン風を吹かせていないと安心されなかったり信頼して貰えない、というのもよくあることです。
- (11)事務作業が意外と多い

訪問看護師は訪問先での看護だけでなく、事務所に帰ってからの事務作業が意外と多いのが大変です。
事務所として利用者や保険(国・市区町村)に料金を請求することや、医師や地域ケアプラザ、ケアマネジャーとの連携のための書類作成など、毎月提出するものがあります。
パソコンが苦手な看護師も多いので、事務作業に四苦八苦している人も多いのではないでしょうか。
訪問看護師の「患者さん」あるある
- (12)個性とこだわりが強い

そもそも病院や施設ではなく在宅療養を選ぶということからして、意思がはっきりしていてその思いを貫く人が多いので、在宅療養の仕方にもこだわりが強い方が多いです。
下剤の種類や量に自分なりのこだわりがあって、看護師の助言を聞かないで下痢と便秘を繰り返していたり、よろよろして転倒しそうになりながらも毎日入浴することにこだわっていたり。
助言を素直に聞いて生活習慣やこだわりを変える、ということはほとんどないのではないでしょうか。高齢になればなるほど、そのこだわりは長年の積み重ねですし、その人の生き方そのものなので、否定することはできません。
訪問する患者は、個性とこだわりが強いことが多いので、「キャラが濃いなぁ〜」という面白い人ばかりです。
- (13)結局なんでもアリ
病院では「あれは禁止、こうしなきゃダメ」と決められた治療や生活環境ですが、在宅では結局なんでもアリなのです。
薬も飲みたくなかったら飲まないですし、誤嚥するといっても好きなアイスや菓子パンを食べています。食前血糖値を測るために訪問しているのに、食後の値を記録することもしばしば。
病院だったらインシデントレポートを書くところですが、在宅ではそれがその人なりの療養で、その人なりの病気と生活の折り合いなのかなと思います。
- (14)家庭事情を聞かされる
本人や家族にとっては、訪問看護師は閉鎖された社会との繋がりなのか、話をしたくてたまらない、という表情の方も多いです。話す相手もいないので、訪問してきたらここぞとばかりにドロドロした家庭事情や昔のいざこざなど、様々な話をされて聞き役に徹することがあります。
家族の介護力や協力体制など、家族背景も大事な情報の一つなのですが、深入りすると公私の区別がつかなくなるので、要注意です。
- (15)看護師をヘルパーさんだと思っている
認知症のある方や、理解力の乏しい方だと訪問してきた人はみんなヘルパーさんだと思っていて、「ね、ヘルパーさん」と呼びかけられることがあります。
点滴をしにきたのに、洗濯を頼まれることや、すりおろしリンゴを作ってと頼まれることも。
看護師ですよ、と伝えてもすぐ忘れてしまうので、もはや諦めるしかないですね(失笑)
まとめ
病院とは違う訪問看護師のユニークな世界がお分かりいただけましたでしょうか。
大変なこともありますが、休憩室は笑い話で盛り上がることも多いです。
興味のある方は「病院から訪問看護師へ転職インタビュー!」を参考に是非訪問看護を体験してみてください。
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